電磁場とは

/電磁気・光学

電磁場とは

場(field)とは、時空の各点に関連する物理量です。場では、座標と時間を指定すれば、ある一つの物理量が定まります。

例えば、電荷の間に働くクーロン力は、一方の電荷の影響が、遠く離れた片方の電荷に直接働く距離力という考え方になります。それに対し、場という概念を導入すると、一方の電荷が周りに場(電場)を作り、その電場の影響によりもう片方の電荷に力が働くという考え方になります。

場という考え方は、19世紀にファラデーによって導入されました。以下は、古典的な電場と磁場について説明します。

電場

電荷($Q$)によって作られる電場($E$)は、以下で表されます。この”$E$”は特に「電場の強さ」と呼びます。太字の表記はベクトル量であることを表しています。

$${\bf E}=\frac{1}{4\pi\epsilon}\frac{Q}{r^2}\frac{{\bf r}}{r}$$

電場の強さの単位は $V/m$ で、単位長さ当りの電位の変化を表します。単位の次元は $MLT^{-3}I^{-1}$ です。

このとき、別の電荷($q$)に対するクーロンの法則は、シンプルに表すことができます。

$${\bf F}=q{\bf E}$$

電束密度

電束密度とは、単位面積当たりの電気力線の本数を表し、電場の強さと同じく、場の物理量です。

電場は、視覚的には、プラスの電荷からマイナスの電荷に向かう電気力線(電束)で表されます。このとき、ある電荷から出入りする電気力線の総数は、電荷の大きさに比例し(単位も同じ)します。電束密度($D$)は以下で表されます。

$${\bf D}=\frac{1}{4\pi}\frac{Q}{r^2}\frac{{\bf r}}{r}$$

電束密度と電場の強さの関係は以下で表されます。

$${\bf D}\equiv\epsilon{\bf E}\equiv\epsilon_0{\bf E}+{\bf P}$$

電束密度の単位は $C/m^2$($C$ はクーロン) で、単位面積当たりの電荷の大きさと同じ次元です。

ここで、$P$ は媒体中の電気分極、$\epsilon$ は媒体中の誘電率、$\epsilon_0$ は真空の誘電率を表します。ある電荷により、その周りに電場(電束密度 $D$)が生じますが、媒体中の電気分極により乱されるため、実際に感じる電場(電場の強さ $E$)の間に差が生じることになります。

電位ポテンシャル

電位ポテンシャル $\phi$ を以下で定義すると、

$${\bf E}=-\nabla\phi  -①$$

電位ポテンシャルは以下で表すことができます。

$$\phi=\frac{1}{4\pi\epsilon}\frac{Q}{r}$$

静電場のエネルギー

$n$ 個の電荷が存在する場合、静電場のエネルギー $U$ は以下で表されます。(②を導く

$$U=\frac{1}{2}\sum_{j=1}^nq_j\phi_j=\frac{1}{2}\int{\bf E}\cdot{\bf D}dV  -②$$

磁場

電場と同様に、磁場も考えることができます。磁荷($Q_m$)によって作られる磁場($H$)は、以下で表されます。この”$H$”は特に「磁場の強さ」と呼びます。

$${\bf H}=\frac{1}{4\pi\mu}\frac{Q_m}{r^2}\frac{{\bf r}}{r}$$

磁場の強さの単位は $A/m$ で、磁場の強さは電流からの距離に反比例します。単位の次元は $L^{-1}I$ です。

このとき、別の磁荷($q_m$)に対するクーロンの法則は、シンプルに表すことができます。但し、磁荷は実際には存在せず、電荷のクーロンの法則に合わせた概念になります。

$${\bf F}=q_m{\bf H}$$

磁束密度

磁束密度とは、単位面積当たりの磁力線の本数を表し、磁場の強さと同じく、場の物理量です。

電場同様、磁場も視覚的には、プラスの磁荷からマイナスの磁荷に向かう磁力線(磁束)で表されます。このとき、ある磁荷から出入りする磁力線の総数は、磁荷の大きさに比例し(単位も同じ)します。磁束密度($B$)は以下で表されます。

$${\bf B}=\frac{1}{4\pi}\frac{Q_m}{r^2}\frac{{\bf r}}{r}$$

磁束密度と磁場の強さの関係は以下で表されます。

$${\bf B}\equiv\mu{\bf H}\equiv\mu_0{\bf H}+{\bf M}$$

磁束密度の単位は テスラ($T$)(=$Wb/m^2$)で、次元は単位面積当たりの磁荷の大きさと同じ次元です。

ここで、$M$ は媒体中の磁気分極、$\mu$ は媒体中の透磁率、$\mu_0$ は真空の透磁率を表します。

ベクトルポテンシャル

磁束密度の発散は常に0になるため、磁束密度はベクトルポテンシャル ${\bf A}$ の回転で表すことができます。

$${\bf B}=\nabla\times{\bf A}$$

静磁場のエネルギー

静磁場のエネルギー $U_m$ も、静電場のエネルギーと同様な考え方で求めることができます。

$$U_m=\frac{1}{2}\int{\bf H}\cdot{\bf B}dV$$

導出

②を導く

電荷 $q_1$ が作る自分の電位 $\phi_1$ は電位係数 $p_{11}$ を使って、

$$\phi_1=p_{11}q_1$$

この電位に電荷 $q_1$ を移動させる仕事は、

$$W_1=\int_0^{q1}\phi_1\delta q=\int_0^{q1}p_{11}q_1\delta q_1=\frac{1}{2}p_{11}q_1^2$$

これに電荷 $q_2$ が追加されたときの電荷 $q_2$ の電位 $\phi_2$ は、

$$\phi_2=p_{21}q_1+p_{22}q_2$$

この電位に電荷 $q_2$ を移動させる仕事は、

$$W_2=\int_0^{q2}\phi_2\delta q_2=\int_0^{q2}(p_{21}q_1+p_{22}q_2)\delta q_2=p_{21}q_1q_2+\frac{1}{2}p_{22}q_2^2$$

電荷 $q_3$ についても同様に計算すると、

$$\phi_3=p_{31}q_1+p_{32}q_2+p_{33}q_3$$$$W_3=\int_0^{q3}\phi_3\delta q_3=p_{31}q_1q_3+p_{32}q_2q_3+\frac{1}{2}p_{33}q_3^2$$

これを $n$ 個の電荷で繰返し、和をとったものが静電界のエネルギーになります。

$$U=\sum_{i=1}^nW_i=\frac{1}{2}\sum_{i,j}^np_{ij}q_iq_j=\frac{1}{2}\sum_{i=1}^n\phi_iq_i$$

電荷密度に置き換えて、ガウスの法則を使うと、

$$U=\frac{1}{2}\int\phi\rho dV=\frac{\epsilon}{2}\int\phi(\nabla\cdot{\bf E})dV$$

ここで公式

$$\nabla\cdot(\phi{\bf E})=\phi(\nabla\cdot{\bf E})+{\bf E}\cdot(\nabla\phi)$$

と①を使うと、

$$U=\frac{\epsilon}{2}\int\Big(\nabla\cdot(\phi{\bf E})-{\bf E}\cdot(\nabla\phi)\Big)dV$$

$$=\frac{\epsilon}{2}\int\phi{\bf E}\cdot d{\bf S}+\frac{\epsilon}{2}\int{\bf E}^2dV$$

第1項はガウスの定理を使っていますが、半径が十分に大きい場合、この面積分は無視できます。これにより②が得られます。

 

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