ビリアル定理とは
ビリアル定理とは、多粒子系における、運動エネルギー $K$ とポテンシャルエネルギー $V$ の関係を表す定理で、以下の式で表すことができます。ここで、運動エネルギーは正の値、ポテンシャルエネルギーは負の値を持ちます。
$$2K+V=0 -①$$
ビリアル定理は、粒子が動き得る範囲が有限である多粒子系において、古典物理、量子物理のいずれにおいても成立し、天体物理などに応用される関係式です。
惑星の平衡状態
惑星が全体として平衡状態のあるとき、構成する原子(電子)の運動エネルギー $K$ 、静電エネルギー $V_e$ 、重力エネルギー $V_g$ の間についてもビリアルの定理が成り立ちます。
$$2K+V_e+V_g=0$$
ビリアル定理を導く
ある軸回りの慣性モーメント $I$ は以下で定義されます。
$$I\equiv\sum_{i=1}^Nm_i{\bf r}_i\cdot{\bf r}_i$$
両辺を2回時間微分すると、以下が得られます。
$$\frac{d^2I}{dt^2}=2\sum_{i=1}^Nm_i(\dot{{\bf r}}_i\cdot\dot{{\bf r}}_i+\ddot{{\bf r}}_i\cdot{\bf r}_i)$$
系全体としては時間的に定常で、慣性モーメントも一定なら左辺は0になります。また、右辺の第1項は運動エネルギー $K$ を表しているため、書き換えると以下が求められます。
$$2K+\sum_{i=1}^N{\bf F}_i\cdot{\bf r}_i=0 -②$$
ここで ${\bf F}_i$ は、粒子 $i$ に対し、他の粒子から働く力(重力など)の総和です。
$${\bf F}_i=\sum_{j\ne i}^N{\bf F}_{ij} -③$$
この ${\bf F}_{ij}$ は、粒子 $i$ に働く粒子 $j$ の力で、向きは $i\to j$(${\bf r}_j-{\bf r}_i$)になります。比例定数を $a$ とすると、一般に距離 $r$ の2乗に反比例する形式で表されます。
$${\bf F}_{ij}=\frac{a}{r_{ij}^2}\frac{{\bf r}_j-{\bf r}_i}{r_{ij}} -④$$$$r_{ij}\equiv|{\bf r}_i-{\bf r}_j|$$
一方、力が上記のように表される場合、ポテンシャルエネルギーは以下になります。
$${\bf F}_{ij}=\nabla V_{ij}$$$$V_{ij}=-\frac{a}{r_{ij}}$$
②の第2項に③を代入して整理し、次に④を代入(2行目)すると、
$$\sum_{i=1}^N{\bf F}_i\cdot{\bf r}_i=\sum_{i=1}^N\sum_{j\ne i}^N{\bf F}_{ij}\cdot{\bf r}_i=\sum_{i<j}^N{\bf F}_{ij}\cdot({\bf r}_i-{\bf r}_j)$$$$=-\sum_{i<j}^N\frac{a}{r_{ij}}=V$$
最後は粒子間に働くポテンシャルの総和 $V$ になります。以上より、ビリアル定理① が求められました。