量子とは、以下の特徴を持つ概念です。
- あらゆる物理量の最小単位
- 粒子と波の両方の性質をもつ
あらゆる物理量の最小単位
量子は、あらゆる物理量の最小単位です。つまり、エネルギーや質量などのあらゆる物理量には、それ以上は分割できない限界が存在するということです。
これは、あらゆる物理量を連続値(実数)としていたそれまでの考え方と根本的に異なるもので、量子という考え方が出てくる以前の物理学を古典物理学と呼びます。ニュートンの力学も、マクスウェルの電磁気学も、アインシュタインの相対性理論も、全て古典物理学に分類されます。
一例として、電磁波のエネルギーの最小単位 $E$ は、電磁波の振動数 $\nu$ とプランクの定数 $h$ から以下の式で求めることができます。電磁波はどんなに弱めてもこれ以下にはならないし、電磁波の強さは常にこの倍数となります。
$$E=h\nu$$
プランクの定数とは
プランクの定数の大きさは、6.6×10のマイナス34乗で、単位はエネルギーと時間の積 $J\cdot s$ となります。通常の場合、この電磁波(光・電波など)の最小単位はとても小さな値なので、日常生活を営む範囲では、電磁波を連続量とみなして全く問題はありません。
プランクの定数は、1900年にプランクにより、彼の黒体放射のエネルギー分布を説明する理論(プランクの法則)の中で導入されました。
プランクは彼の理論の中で、電磁波のエネルギーの受け渡しは大きさ $h\nu$ を単位としてのみ起こり得ると仮定しました。しかし、プランク自身は「量子」の意味を認識しておらず、それまで解決できなかった難問が「こうすれば解決する」という程度のアイデアだったようです。
粒子と波の両方の性質をもつ
粒子は、ボールや砂つぶなど、位置や速度などの物理量で表されます。波は、水面の波など、波長や振幅なので物理量で表されます。両者はまったく違うモノに見えますが、量子は両方の性質を持っているということです。
「波は粒子であり、粒子は波である」と言われてもイメージがつきませんが、まずは「自然はそうなっている」と受け入れるしかないのです。
波は粒子である(光電効果)
光や電波などの電磁波は、それまで「波」と考えられてきました。それは、二重スリットを通した光が干渉縞を作るなど、波として性質を持っていたからです。
しかし、「波」と考えては説明できない現象が現れました。
金属に光を当てると電流が発生します。これは光電効果と呼ばれます。このとき、当てる光と発生する電流(電子)の間に以下の関係があることが分かりました。
- 明るい光は、電流は増えるが、電子の運動エネルギーは変わらない
- 振動数の高い光は、電子の運動エネルギーは増えるが、電流は変わらない
光を当てると電子が発生するので、光のエネルギーが電子の運動エネルギーに移ったと考えるのが妥当です。波のエネルギーは、振幅(明るさに相当)の2乗に比例しますが、電子の運動エネルギーが光の明るさに関係ないとした光電効果の結果は明らかに矛盾しているのです。
1905年にアインシュタインは、光のエネルギーを $h\nu$ を単位とする「光量子(光子)仮説」を発表しました。光の明るさは光子の数で、光の振動数は光子1個のエネルギーに比例します。これにより、光電効果は以下のように解釈できるのです。
- 光子の数を増やすと、電子の数は増える(電子の運動エネルギーは変わらない)
- 光子のエネルギーを増やすと、電子の運動エネルギーは増える(電子の数は変わらない)
粒子は波である(物質波)
1924年にド・ブロイは、光子以外の一般の物質の場合も、波としての性質を持つとの概念を導入しました。これを物質波(ド・ブロイ波)と呼びます。このとき、波長 $\lambda$ と運動量 $p$ の間には以下の関係式が成り立ちます。
$$\lambda=\frac{h}{mv}=\frac{h}{p}$$
ここで、$m$ は質量、$v$ は速度を表します。