本記事では、ゲーム理論におけるマックスミニ戦略とミニマックス戦略について解説します。
マックスミニ戦略
マックスミニ戦略とは、あるプレイヤが取りうる各選択肢における最小の利得(ミニ)の中で、最大の利得(マックス)を選択する戦略です。これにより、そのプレイヤの最悪の場合の利得を、より大きくすることができ、この利得をマックスミニ値と呼びます。
純粋戦略の場合
マックスミニ戦略を、定和ゲームでの純粋戦略の場合で説明します。定和ゲームとは、プレイヤの利得の合計が一定値になるゲームで、純粋戦略とは、各プレイヤが1つの戦略のみ選択できる場合を言います。
プレイヤが2人(プレイヤ $A$ とプレイヤ $B$ )、戦略が2つ(戦略 $X$ ,戦略 $Y$ )の場合で考えます。以下の利得表では、各プレイヤの戦略と利得の関係を表しています。
$A\backslash B$ | $B:X$ | $B:Y$ |
$A:X$ | $A=6,B=4$ | $A=5,B=5$ |
$A:Y$ | $A=4,B=6$ | $A=7,B=3$ |
プレイヤ $A$ が戦略 $X$ をとった場合の最低の利得は5( $B$ は戦略 $Y$ )になり、戦略 $Y$ をとった場合の最低の利得は4( $B$ は戦略 $X$ )になります。両者を比べるとより大きい利得は5になります。これより、プレイヤ $A$ のマックスミニ戦略は戦略 $X$ で、マックスミニ値は5となります。
一方、プレイヤ $B$ も同様に考えると、プレイヤ $B$ が戦略 $X$ をとった場合の最低の利得は4( $A$ は戦略 $X$ )になり、戦略 $Y$ をとった場合の最低の利得は3( $A$ は戦略 $Y$ )になります。これより、プレイヤ $B$ のマックスミニ戦略は戦略 $X$ で、マックスミニ値は4となります。
従って、両プレイヤのマックスミニ戦略の組は(戦略 $X$ 、戦略 $X$ )となります。しかし、この場合のマックスミニ戦略の組は、ナッシュ均衡となっていません。なぜなら、$A$ が戦略 $X$ をとった場合の $B$ の利得は、戦略 $X$ より戦略 $Y$ の方が大きいからです。
混合戦略の場合
混合戦略とは、各プレイヤが複数の戦略の組合せを選択できる場合を言います。混合戦略まで含めると、マックスミニ戦略の組はナッシュ均衡となることが証明されています。
定和ゲームでは、相手の利得を下げることが自分の利得を上げることになるため、マックスミニ戦略によりナッシュ均衡が導かれる理由です。
ミニマックス戦略
ミニマックス戦略とは、あるプレイヤが取りうる各選択肢における、相手のプレイヤの利得の最大(マックス)の中で、最小の利得(ミニ)を選択する戦略です。このときの自分の利得をミニマックス値と呼びます。これは、相手の利得の最小が、自分の利得の最大となる定和ゲームで成り立つ戦略です。
双方の利得の和が0になるゼロゲームの場合は、あるプレイヤが取りうる各選択肢における最大の損失(マックス)の中で、最小の損失(ミニ)を選択する戦略と表現されます。つまり、そのプレイヤの最悪の場合の損失を、より小さくすることができます。
純粋戦略の場合
ミニマックス戦略を、定和ゲームでの純粋戦略の場合で説明します。
$A\backslash B$ | $B:X$ | $B:Y$ |
$A:X$ | $A=6,B=4$ | $A=5,B=5$ |
$A:Y$ | $A=4,B=6$ | $A=7,B=3$ |
この利得表では、プレイヤ $A$ が戦略 $X$ をとった場合の $B$ の最大の利得は5になり、戦略 $Y$ をとった場合の $B$ の最大の利得は6になります。両者を比べるとより小さい $B$ の利得は5になります。これより、プレイヤ $A$ のミニマックス戦略は戦略 $X$ で、ミニマックス値は5であると言うことができます。
一方、プレイヤ $B$ も同様に考えると、プレイヤ $B$ が戦略 $X$ をとった場合の $A$ の最大の利得は6になり、戦略 $Y$ をとった場合の $A$ の最大の利得は7になります。これより、プレイヤ $B$ のミニマックス戦略は戦略 $X$ で、ミニマックス値は4であると言うことができます。