収益還元法
収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すと期待される純収益の現在価値を求めることにより、対象不動産の収益価値を求める手法です。直接還元法とDCF(Discount Cash Flow)法に大別されます。
直接還元法
直接還元法は、対象不動産の価格を直接求める方法です。
$$\mbox{収益価格}=\frac{\mbox{総収益}-\mbox{総費用}}{\mbox{還元利回り}}$$
還元利回りには、一期間の純収益の変動予測や価格の変動予測が反映されます。還元利回りの求め方には、類似の不動産との取引事例との比較から求める方法や、借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法があります。
DCF法
DCF(Discounted Cash Flow)法は、対象不動産の保有期間中に得られる純収益の現在価値の総和と、保有期間終了時の売却予測価格(復帰価格)の現在価値の合計で表されます。
$$\mbox{収益価格}=\sum_{k=1}^n\frac{\mbox{毎期の純収益}}{(1+\mbox{割引率})^k}+\frac{\mbox{売却予測価格}}{(1+\mbox{割引率})^n}$$
割引率とは、投資家が対象不動産に対して期待する収益率です。割引率は、10年国債の利率にリスクを加味して算出されます。
複利原価率とは、上式右辺の以下の部分を指し、DCF法で想定された毎期の純収益や売却予測価格を現在価格に割り戻すための利率です。
$$\mbox{複利原価率}=\frac{1}{(1+\mbox{割引率})^k}$$
投資利回り
投下資本総収入利回り
投下資本総収入利回り(表面利回り、粗利周り)は、情報収集段階での指標です。諸経費等を考慮していないので、正確さには欠けます。
$$\mbox{投下資本総収入利回り}=\frac{\mbox{年間総収入}}{\mbox{自己資金}+\mbox{借入金}}$$
投下資本純収入利回り
投下資本純収入利回りは、投資の意思決定段階で利用する指標です。諸経費を考慮しているので、実態に即した指標と言えます。
$$\mbox{投下資本純収入利回り}=\frac{\mbox{年間総収入}-\mbox{諸経費}}{\mbox{自己資金}+\mbox{借入金}}$$
自己資本収益率
自己資本収益率(キャッシュ・オン・キャッシュ)は、投資の計画策定段階で利用する指標です。投下資本純収入利回りの収入から、さらに借入金返済額(元本)を差し引いており、手持ち資金の運用効率を示しています。
$$\mbox{自己資本収益率}=\frac{\mbox{収入}-\mbox{支出}}{\mbox{自己資本}}=\frac{\mbox{剰余金}}{\mbox{自己資本}}$$
投資指標
正味現在価値(NPV)法
正味現在価値(Net Present Value)法は、投資対象が生み出すキャシュフローの現在価の総和(DCF法の収益価格)から、初期投資額を引いて計算します。
$$\mbox{正味現在価値}=\mbox{収益価格}-\mbox{投資予定額}$$$$=\Big(\sum_{k=1}^n\frac{\mbox{毎期の純収益}}{(1+\mbox{割引率})^k}+\frac{\mbox{売却予測価格}}{(1+\mbox{割引率})^n}\Big)-\mbox{投資予定額}$$
内部収益率(IRR)法
内部収益率(Internal Rate of Return)とは、投資期間中の収益の現在価値の総和と投資額の現在価値等しくなる収益率で、以下で表すことができます。
$$\mbox{投資額}=\sum_{k=1}^n\frac{k\mbox{ 年目純収益}}{(1+\mbox{内部収益率})^k}+\frac{\mbox{売却価格}}{(1+\mbox{内部収益率})^n}$$
この内部収益率が大きいほど、有利な投資と判断することができます。
借入金償還余裕率(DSCR)
借入金償還余裕率(Debt Service Coverage Ratio)とは、年間の元本返済額に対する純収入の割合で、借入金の返済能力を示す指標です。借入金償還余裕率が大きいほど返済能力に余裕があるとされます。
$$\mbox{借入金償還余裕率}=\frac{\mbox{元利金支払い前キャッシュフロー}}{\mbox{元利金返済額}}$$