リッチテンソル
リッチテンソルとは、歪んだ空間(リーマン多様体)の球体と平らな空間(ユークリッド空間)の球体との差を表す量です。リッチテンソル $R_{ij}$ は、リーマン曲率テンソルの縮約として定義されます。
$$R_{ij}\equiv R^k_{ijk}$$
リーマン曲率テンソルの部分を書き出すと以下になります。
$$R_{ij}=\frac{\partial\Gamma_{ik}^k}{\partial x^j}-\frac{\partial\Gamma_{ij}^k}{\partial x^k}+\Gamma_{ik}^m\Gamma_{mj}^k-\Gamma_{ij}^m\Gamma_{mk}^k -①$$
対称性
リッチテンソルは以下の対称性を持ちます(②の導出)。
$$R_{ij}=R_{ji} -②$$
スカラー曲率
スカラー曲率とは、歪んだ空間の全曲率を表す量で、3次元の球面に対して正となるように定義されています。スカラー曲率 $R$ は、リッチテンソルを縮約することで得られます。
$$R=R_{ii}$$
ビアンキの関係式
リーマン曲率テンソルのビアンキの恒等式より、リッチテンソルにおける関係式が得られます(③の導出)。
$$\Big(R^{ij}-\frac{1}{2}g^{ij}R\Big)_{:j}=0 -③$$
式の導出
②を導く
リーマン曲率テンソルの対称性
$$R_{kijl}=R_{ljik}$$
の両辺に $g^{kl}$ を掛けると、
$$g^{kl}R_{kijl}=g^{kl}R_{ljik}$$$$R_{ijl}^l=R_{jik}^k$$
これより②が得られることが分かります。
③を導く
ビアンキの恒等式より、
$$R_{ijk:l}^m+R_{ikl:j}^m+R_{ilj:k}^m=0$$
$m=l$ として、$g^{ij}$ を掛けると、$g^{ij}$ は共変微分に対して定数なみであるから、
$$(g^{ij}R_{ijk}^l)_{:l}+(g^{ij}R_{ikl}^l)_{:j}+(g^{ij}R_{ilj}^l)_{:k}=0 -①$$
①の第1項は、
$$g^{ij}R_{ijk}^l=g^{ij}g^{lm}R_{mijk}=g^{ij}g^{lm}R_{imkj}=g^{lm}R_{mk}=R^l_k$$
①の第3項は、
$$g^{ij}R_{ilj}^l=-g^{ij}R_{ijl}^l=-g^{ij}R_{ij}=-R$$
となるため、①は次のように書き換えられ、
$$2R^j_{k:j}-R_{:k}=0$$
添え字を入れ替えると以下が得られます。
$$g_{ki}(2R^{ij}-g^{ij}R)_{:j}=0$$