非上場株式
非上場株式とは、マーケット(東京証券取引所など)に公開していない株式を指し、未公開株とも呼ばれています。
非上場株式は、取引相場が存在しないことから客観的な価格を把握するのは難しく、相続や事業承継により株式を引き継ぐ際は、様々な条件に照らし合わせながら適切に評価を行う必要があります。
非上場株式の相続税対策としては、主に以下の5つが挙げられます。
- 生前贈与により株式を贈与する
- 配当金額・利益金額・純資産価額を引き下げる
- 特定の評価会社に分類されないための対策を行う
- 新会社を設立して株式を移転する
評価方法の決定
非上場株式の評価は、同族株主(オーナ一族)と少数株主(同族株主以外)で異なります。
同族株主の場合は、会社支配権と配当期待権を考慮する原則的評価方法(類似業種比準価額方式・純資産価額方式)を採用し、少数株主の場合は、配当期待権のみを考慮する特例的評価方式(配当還元方式)を採用します。
未上場株式の評価は以下の手順で行います。
- 同族株主の判定
- 会社規模の判定
- 特定会社の判定
- 評価方法の判定
同族株主の判定
同族株主とは、同族関係者グループが有する議決権割合が30%以上である株主とその同族関係者です。同族関係者とは、株主の3親等以内の尊属と卑属、配偶者、配偶者の1親等以内の尊属と卑属、兄弟姉妹、子の配偶者などが該当します。
尚、他に議決権割合が50%以上である同族関係者グループがある場合は、その同族関係者グループが同族株主となり、その他の株主グループは同族株主に該当しません。
同族株主のいる会社 | 同族株主以外の株主 | 配当還元方式 |
上記以外で、かつ、取得後の議決権割合が5%未満、かつ、中心的株主がいる場合で、かつ、中心的株主でも役員(予定含む)でもない株主 | ||
上記以外の同族株主 | 原則的評価方法 | |
同族株主のいない会社 | 議決権割合の合計が15%未満の株主グループの株主 | 配当還元方式 |
上記以外で、かつ、取得後の議決権割合が5%未満、かつ、中心的株主がいる場合で、かつ、中心的株主でも役員(予定含む)でもない株主 | ||
上記以外の株主 | 原則的評価方法 |
尚、中心的株主とは、株主1人および同族関係者の議決権割合が25%以上の株主グループに属する株主を指します。
会社規模の判定
会社規模は、従業員数・総資産価額・取引金額により、大会社・中会社の大・中会社の中・中会社の小・小会社に分類されます。会社規模により、原則的評価方法の類似業種比準価額と純資産価額の折衷割合(L)が異なります。
従業員数 ≧ 70人 | - | 大会社 | L=1.0 |
従業員数 < 70人 | 総資産価額と取引金額 により判定 ※卸売業、小売業・サービス業とその他の業種で異なる |
大会社 | L=1.0 |
中会社の大 | L=0.9 | ||
中会社の中 | L=0.75 | ||
中会社の小 | L=0.6 | ||
小会社 | L=0.5 |
特定会社等の判定
以下に該当する特定会社等の場合、財務内容が一般的でなく、類似業種比準価額での比較が妥当でないため、純資産価額方式で評価します。尚、1~4について、同族株主以外の株主等については、配当還元方式により評価します。
- 類似業種比準方式の「配当」「利益」「純資産」のうち、いずれか2つが直前期末でゼロであり、かつ、いずれか2つ以上が直前々期末でゼロである会社の株式
- 株式等保有特定会社
総資産価額中に占める株式、出資および新株予約権付社債の価額の合計額の割合が一定の割合以上の会社の株式 - 土地保有特定会社
土地等の保有割合が一定の割合以上の会社の株式 - 課税時期において開業後3年未満の会社等
類似業種比準方式の「配当」「利益」「純資産」が直前期末において全てゼロである会社の株式を含む - 開業前または休業中の会社の株式
評価方法の判定
会社規模により適用する評価方式が異なります。大会社は、類似業種比準価額と純資産価額の低い金額が、大会社以外の会社は、折衷価額と純資産価額の低い金額で評価されます。尚、特定会社等の場合は、純資産価額でのみ評価されます。
会社規模 | 類似業種 比準価額 |
折衷価額 | 純資産価額 | |
類似業種比準価額 (Lの割合) |
純資産価額 | |||
大会社 | ○ | - | - | ○ |
中会社の大 | - | 0.9 | 0.1 | ○ |
中会社の中 | - | 0.75 | 0.25 | ○ |
中会社の小 | - | 0.6 | 0.4 | ○ |
小会社 | - | 0.5 | 0.5 | ○ |
各評価方法
類似業種比準方式
類似業種比準価額方式は、業種の類似する上場会社の株価を基にして「配当」「利益」「純資産」を加味して算出します。
$$\mbox{類似業種比準価額}=A\times\frac{1}{3}\Big(\frac{b}{B}+\frac{c}{C}+\frac{d}{D}\Big)\times\mbox{斟酌率}$$
各項目は以下になります。
- $A$:類似業種の株価
- $B$:類似業種の課税時期の属する年分の1株当りの配当金額
- $b$:評価会社の直前期および直前々期の1株当りの配当金額の平均額
- $C$:類似業種の課税時期の属する年分の1株当りの年利益金額
- $c$:評価会社の直前期末以前1年間または2年間の1株当りの利益金額の平均の低い方
- $D$:類似業種の課税時期の属する年分の1株当りの簿価純資産金額
- $d$:評価会社の直前期の1株当りの簿価純資産金額
- 斟酌率(大会社:0.7、中会社:0.6、小会社:0.5)
純資産価額方式
純資産価額方式は、課税時期における資産・負債の相続税評価額を基にして算出します。
$$\mbox{純資産価額}=\frac{\mbox{総資産価額}-\mbox{負債金額}-\mbox{法人税相当額等}}{\mbox{発行済株式総数}}$$
$$\mbox{法人税相当額等}=(\mbox{相続税評価額による純資産価額}-\mbox{帳簿価額による純資産価額})\times0.37$$
配当還元方式
配当還元方式は以下の方法で算出します。
$$\mbox{配当還元}=\frac{\mbox{年配当金額}}{10%}\times\frac{\mbox{1株当りの資本金等}}{50\mbox{円}}$$
尚、年間配当額は以下で計算されます。
$$\mbox{年間配当額}=\frac{\mbox{直前期の年間配当金額}+\mbox{直前々期の年間配当金額}}{2}\times\frac{\mbox{資本金等の額}}{50\mbox{円}}$$