初転法輪とは

/仏教

初転法輪

初転法輪とは、釈迦が悟りを開いた後、鹿野苑(サールナート)にて初めて仏教の教義(法輪)を人びとに説いた出来事を指し、仏教の中核概念である中道、四諦、八正道、無我が説かれたとされています。

釈迦は菩提樹下で悟りを開いた後(成道)、ヴァーラーナスィ(波羅奈国)のサールナート(仙人堕処)鹿野苑において、昔の5人の修行仲間(五比丘)に初めて仏教の教義を説いたと伝えられています。

中道

中道とは、快楽主義と苦行主義の両方を否定するもので、相互に対立し矛盾する2つの極端な概念・姿勢に偏らない実践や認識のあり方を指します。釈迦はこの「苦楽中道」を最初に述べたとされ、目的に適った適正な修行方法(八正道)を取ることを説きました。

また、哲学的な教説としては、断見(自己の断滅を主張する見解)と常見(自己の常在を主張する見解)の両極端を離れる断常中道、有見(一切が有るとする見解)と無見(一切が無であるとする見解)の両極端を離れる有無中道などを説きました。

四諦

四諦(したい)とは、釈迦が悟りに至る道筋を説明するためにまとめた4つの真理であり、釈迦の悟りそのものと考えることができます。

苦諦(くたい) この世界の一切が苦であるという真理
集諦(じったい) 苦の原因は煩悩であるという真理
滅諦(めったい) 苦は滅することができるという真理
道諦(どうたい) 苦を滅する方法は仏道(八正道)であるという真理

特に苦諦は、釈迦の人生観の根本であり、人間の生存自身のもつ必然的姿と考えています。四苦八苦という言葉はこのことを指しています。

四苦 病むこと、老いること、死ぬこと、生きること
八苦 愛別離苦 愛する対象と別れること
怨憎会苦 憎む対象に出会うこと
求不得苦 求めても得られないこと
五蘊盛苦 身体・感覚・概念・決心・記憶に執着すること

八正道

八正道とは、道諦によって示された苦しみを滅するための方法(仏道)です。八正道は、戒(戒律)・定(禅定)・慧(智慧)の三学に分類されます。

正語 正しい言葉を使うこと、嘘や無駄話、人を傷つける言葉を吐かないこと
正業 正しい行為を行うこと、殺生、盗み、道徳に反する性的関係を行わないこと
正命 規律正しい生活を営むこと
正精進 正しく努力をすること、過去の不善を断じ、未来の不善を防ぎ、過去の善の増し、未来の善を生じさせること
正念 四念処(身、受、心、法)に心を向ける、仏の教えを正しく心に留めること
正定 正しい瞑想、精神集中(三昧)を完成すること
正見 仏の智慧、四諦の真理などを正しく知ること、物事を正しく見ること
正思惟 正しく考え、判断すること

無我

無我(むが)とは、あらゆる事物は現象として生成しているだけであり、それ自体を根拠づける不変的な実体は存在しないする考え方です。これを諸法無我と呼びます。

全てのものには、永遠に変化せず、独立的に自存し、中心的な所有主としての支配能力がある我(アートマン)はないと説きます。この思想は、大乗仏教にも受け継がれて、般若思想では無我は「空」と表現されています。

 

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