所得とは、年間の合計収入から所得控除を差し引いた金額のことです。所得は、その収入源により以下の10種類に分類されます。
利子所得
利子所得は以下が該当します。
- 預貯金および公社債の利子ならびに合同運用信託の収益の分配
- 公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配に
利子所得は以下で計算されます。
利子所得 = 利子収入 |
利子所得の課税関係は以下になります。
原則 | 源泉分離課税(税率15.315%) +地方税5% |
特定公社債等(国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債) | 申告分離課税(税率15.315%) +地方税5% |
少人数私募債の利子、外資建て預金の利子等 | 総合課税 |
尚、非課税となる利子所得は以下が該当します。
- 障害者等の少額貯蓄
- 勤労者財産形成住宅貯蓄および勤労者財産形成年金貯蓄の利子
- 納税貯蓄組合預金や納税準備預金の利子
- いわゆる子供銀行の預貯金等の利子
配当所得
配当収入は以下が該当します。
- 株式・出資に係る剰余金の配当・分配
- 相互保険会社の基金に関する利息
- 証券投資信託の収益の分配金(公社債投資信託を除く)
- 投資信託(公社債投資信託・公募公社債等運用投資信託を除く)
- 特定受益証券発行信託の収益の分配
配当所得は以下で計算されます。
配当所得 = 配当収入 - 株式などを取得するための借入金の利子 |
配当所得の課税関係は以下になります。区分に応じて所得税等が源泉徴収され、源泉徴収された所得税等は、原則として、その年分の納付すべき所得税額等を計算する際に差し引きます。
上場株式等の配当等(大口株主等が支払いを受ける上場株式等の配当等を除く) | 15.315% +地方税5% |
上場株式等以外の配当等(大口株主等が支払いを受ける上場株式等の配当等を含む) | 20.42%(地方税なし) |
但し、以下のものは申告不要とできます。
- 少額配当である場合(次に掲げる配当等を除く)
- 上場株式等の配当等および投資法人からの金銭の分配の場合(大口株主等が支払を受ける場合を除く)
不動産所得
不動産収入は以下が該当します。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 借地権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
- 名義書換料、承諾料、更新料または頭金などの名目で受領するもの
- 敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの
- 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など
不動産所得は、不動産の賃貸などが該当します。不動産所得は以下で計算されます。
不動産所得 = 不動産収入 - 必要経費 - 青色申告特別控除 |
必要経費は以下が該当します。
- 固定資産税
- 損害保険料
- 減価償却費
- 修繕費
事業所得
事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業など、自営業で得た所得で、山林所得や譲渡所得に該当するものを除きます。尚、事業所得は、継続・独立して行われることが前提となっています。
事業所得は以下で計算されます。事業所得は総合課税とされ、超過累進課税により所得税が課税されます。
事業所得 = 事業収入 - 必要経費 - 青色申告特別控除 |
必要経費は以下が該当します。
売上原価 | 期首商品+当期仕込-期末商品 |
販売費、一般管理費 | 租税公課、水道光熱費、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、損害保険料、修繕費、消耗品費、給料賃金、福利厚生、家賃地代等事業用経費 |
給与所得
給与所得は、一定の雇用雇用契約に基づき提供した労務の対価として、毎月または定期的に支払いを受ける給付が該当します。給与所得は総合課税になります。
給与所得は以下で計算されます。
給与所得 = 給与収入 - 給与所得控除 |
給与所得控除は以下で計算されます。
給与収入 | 給与所得控除 |
~ 180万円 | 収入金額 × 40%(最低控除額65万円) |
180万円超 ~ 360万円 | 収入金額 × 30% + 18万円 |
360万円超 ~ 660万円 | 収入金額 × 20% + 54万円 |
660万円超 ~ 1,000万円 | 収入金額 × 10% + 120万円 |
1,000万円超 ~ | 220万円 |
尚、非課税となる給与所得は以下が該当します。
- 出張旅費、転任に伴う転居旅費のうち通常必要と認められる金額
- 通勤手当のうち1ヵ月当り15万円の金額
- 現物給与(記念品等、研修費用、制服など職務上欠くことができないもの)
- 国外勤務者の一定の在外手当
退職所得
退職所得は、退職によって勤務先から支給される退職金などが該当します。
退職所得は以下で計算されます。
退職所得 =(退職収入 - 退職所得控除)× 1/2 |
退職所得控除は以下になります。
勤続年数が20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
勤続年数が20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年) |
尚、障害者になったことに直接起因して退職した場合は、上記金額に100万円が加算されます。
山林所得
山林所得は、山林を伐採・売却、または立木のまま譲渡して得た収入が該当します。山林所得は以下で計算されます。
山林所得 = 山林収入 - 必要経費 - 特別控除 |
譲渡所得
譲渡所得は、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの譲渡によって得た収入が該当します。譲渡所得の課税関係は以下になります。
不動産 | 短期(譲渡年の1/1で所有期間が5年以下) | 分離課税 |
長期(譲渡年の1/1で所有期間が5年超) | ||
株式 | 所有期間は関係なし | |
その他 | 短期(譲渡年した日までの所有期間が5年以下) | 総合課税 |
長期(譲渡年した日までの所有期間が5年超) |
譲渡所得は以下で計算されます。
譲渡所得 = 譲渡収入 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除 |
総合課税
総合課税は、他の所得と合算し、その合計額に対して超過累進課税で課税されます。
取得費は、購入代金のほか、購入手数料や設備費・改良費なども含まれます。但し、使用や経年により減価する資産の場合は、減価償却費相当額を差し引きます。
特別控除の額は、長期と短期の譲渡益の合計額に対し最大50万円です。長期と短期がある場合は、短期から優先的に差し引きます。
分離課税(不動産等)
取得費とは、購入代金のほか、購入手数料や設備費・改良費なども含まれます。但し、使用や経年により減価する資産の場合は、減価償却費相当額を差し引きます。
特別控除額は、一定の要件を満たす場合に適用されます。
- 5,000万円:収用等によち土地建物を譲渡した場合
- 3,000万円:マイホームを譲渡した場合
- 2,000万円:特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合
土地建物等の分離課税の税率は以下になります。
課税長期譲渡所得の税率 | 20%(所得税15%、住民税5%) |
課税短期譲渡所得の税率 | 39%(所得税30%、住民税9%) |
分離課税(株式等)
株式等の分離課税の税率は以下になります。
上場株式等の譲渡所得の税率 | 20%(所得税15%、住民税5%) |
一般株式等の譲渡所得の税率 | 20%(所得税15%、住民税5%) |
不動産譲渡
不動産を譲渡した場合、条件により特別控除や軽減税率などが適用されます。
居住用財産を譲渡した場合の特別控除
居住用財産である土地や建物を譲渡した場合、譲渡益から3,000万円が控除されます。居住用財産を譲渡した場合の軽減税率と重複が可能です。但し、3年に1度の適用になり、前年や前々年に適用を受けた場合は対象外になります。
現在、自己の居住用である土地や建物の他、次の場合が特例の対象となります。
- 自己が居住しなくなった日から3年後の年末までの譲渡
- 家屋を取壊した日から1年以内に譲渡契約を締結
- 義父母→子の配偶者、兄→生計別の弟(譲渡後は同居できない)
但し、夫(妻)→妻(夫)、父(母)→子は対象外
相続した空家を譲渡した場合の特別控除
相続開始直前においてに相続人のみの居住用だった空家と敷地を相続(2027年12月31日まで)し、一定期間内に譲渡した場合、譲渡益から3,000万円が控除されます。但し、居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の対象外です。
適用の要件は以下になります。
- 1981年5月までに建築された家屋であること
- 相続の日から3年目の年末までの譲渡であること
- 譲渡対価の額が1億円以下であること
- 相続時から譲渡時まで事業用・貸付用・居住用に供されていないこと
- 新耐震基準に適合すること
被相続人が老人ホーム等に入所し、居住の用に供されなくなった家屋及び敷地は、次の要件を満たせば特例の対象となります。
- 被相続人が要介護認定等を受け、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所していたこと
- 被相続人の入所の間に、事業用・貸付用・他者の居住用に供されていないこと
居住用財産を譲渡した場合の軽減税率
所有期間が10年を超える居住用財産である土地や建物を譲渡した場合、譲渡益の6,000万円以下の部分に対する税率が低くなります。
- 6,000万円以下の部分
所得税額 = 長期譲渡所得 × 10%
住民税額 = 長期譲渡所得 × 4% - 6,000万円超の部分(通常の税率)
所得税額 = 長期譲渡所得 × 15%
住民税額 = 長期譲渡所得 × 5%
本軽減税率は、居住用財産を譲渡した場合の特別控除とは重複適用可能ですが、相続した空家を譲渡した場合の特別控除とは重複適用できません。
取得費加算の特例
相続財産を取得した場合の取得費は、一定の相続税を取得費に加算できる特例があります。取得費は次のように計算されます。
取得費 = 譲渡資産の取得費 + 設備費・改良費 - 減価償却相当額
自宅等の非業務用資産の減価償却相当額は以下で計算されます。
減価償却相当額 = 所得費等 × 0.9 × 旧定額法の償却率 × 経過年数
固定資産の交換
同種の固定資産を交換した場合、交換で譲渡した資産の譲渡益はなかったものとし、特例として課税を将来へ繰り延べることができます。適用要件は以下になります。
- 同種の固定資産であること
- 両者が1年以上有しており、交換のために取得したものではないこと
- 差額が高い方の価額の20%相当額以内であること
譲渡益については以下のように考えます。
- 譲渡資産の価額 ≦ 取得資産の価額
⇒譲渡は無かったものとされます - 譲渡資産の価額 > 取得資産の価額
⇒交換差金について譲渡が有ったものとされます
一時所得
一時所得は、懸賞・福引・公営ギャンブル等の払戻金、生命保険契約の一時的な所得が該当します。一時所得は以下で計算されます。
一時所得 = 一時収入 - 所得に要した金額 - 特別控除 |
特別控除は最高50万円です。
雑所得
雑所得は、公的年金など、他の所得に該当しない収入です。
公的年金等
公的年金等の雑所得は以下で計算されます。
雑所得 = 雑収入 - 公的年金等控除 |
65歳以上の場合の公的年金控除は以下になります。
公的年金等の収入合計額 | 公的年金等控除 |
~ 330万円未満 | 120万円 |
330万円 ~ 410千円未満 | 収入金額 × 25% + 37.5万円 |
410万円 ~ 770万円未満 | 収入金額 × 15% + 78.5万円 |
770万円 ~ | 収入金額 × 5% + 155.5万円 |
その他の雑所得
その他の雑所得は以下で計算されます。
雑所得 = 雑収入 - 必要経費 |