自我偈とは
自我偈（じがげ）とは、妙法蓮華経（法華経）の第16章に当る「如来寿量品」の偈（げ）の部分を指します。偈の冒頭が「自我得仏来」で始まるため、「自我偈」と呼ばれています。
釈迦は人として誕生し、悟りを開き仏陀（仏）となり、入滅しましたが、本来は永遠の昔から悟りを開いており、この仏の命は永遠であると説かれています。
自我偈を読む
| 自我得仏来、所経諸劫数、無量百千万、億載阿僧祇 |
私が仏になってから経過した期間は、計り知れない百千万億という長い時間です。
| 常説法教化、無数億衆生、令入於仏道、爾来無量劫 |
常に法を説いて、数限りない衆生を教化し、仏の道に導き、長い時間が経過しました。
| 為度衆生故、方便現涅槃、而実不滅度、常住此説法 |
衆生を救うために、入滅という手段をとりましたが、実際に入滅したのではなく、常にこの世にいて法を説いています。
| 我常住於此、以諸神通力、令顛倒衆生、雖近而不見 |
私は常にこの世にいますが、神通力によって、迷っている衆生には、近くにいても見えないでいます。
| 衆見我滅度、広供養舎利、咸皆懐恋慕、而生渇仰心 |
衆生は私の入滅を見て、私の遺骨を供養し、皆私を懐かしく慕い、渇望し仰ぐ心を起こしました。
| 衆生既信伏、質直意柔軟、一心欲見仏、不自惜身命、時我及衆僧、倶出霊鷲山 |
衆生が信仰心を起こし、素直で柔軟さをもち、一心に仏を見ることを欲し、自らの身命も惜しまないなら、その時私とは弟子たちは、霊鷲山に姿を現します。
| 我時語衆生、常在此不滅、以方便力故、現有滅不滅 |
その時私は衆生に語ります、私は常にこの世にあり入滅することはない、人々を導く手段として、入滅してみせたのです。
| 余国有衆生、恭敬信楽者、我復於彼中、為説無上法 |
他の国土の衆生も、私を信じ敬うならば、その人々のためにも、は最高の法を説くでしょう。
| 汝等不聞此、但謂我滅度、我見諸衆生、沒在於苦海 |
あなた達はこれを聞かないで、私が入滅したと思い、私が衆生を見るところ、苦悩の中に没してしまっている。
| 故不為現身、令其生渇仰、因其心恋慕、乃出為説法 |
そのため姿を現わさず、渇望する心を起こさせました、今私を恋い慕う心が起こったので、こうして姿を現し法を説くのです。
| 神通力如是、於阿僧祇劫、常在霊鷲山、及余諸住処 |
私の神通力はこの通りであり、計り知れない長い間、常にこの霊鷲山や、あらゆる処にいます。
| 衆生見劫尽、大火所焼時、我此土安隠、天人常充満 |
衆生がこの世が終わりを迎え、大火で焼かれる時も、私の国土は安穏で、常に天の神々や人々で満ちています。
| 園林諸堂閣、種種宝荘厳、宝樹多花菓、衆生所遊楽 |
花園や様々な宮殿は、種々な宝石で飾られ、木々には多くの花や実がなり、衆生が楽しむ場所となっている。
| 諸天撃天鼓、常作衆伎楽、雨曼陀羅花、散仏及大衆 |
天の神々は鼓を打ち、常に多くの音楽を奏でて、曼荼羅の花を雨のように、仏や衆生の上に散らしています。
| 我浄土不毀、而衆見焼尽、憂怖諸苦悩、如是悉充満 |
私の浄土は不滅であるのに、衆生はこの国土が焼き尽くされて、憂いや恐怖や様々な苦悩が、満ち溢れていると見ている。
| 是諸罪衆生、以悪業因縁、過阿僧祇劫、不聞三宝名 |
罪を重ねてきた衆生は、悪行の報いとして、どんな長い時間が過ぎても、仏の三宝の名を聞くことはない。
| 諸有修功徳、柔和質直者、則皆見我身、在此而説法 |
様々な功徳をなし、柔和で素直な者は、皆私の姿を見ることができ、私の法を聞くことができます。
| 或時為此衆、説仏寿無量、久乃見仏者、為説仏難値 |
この衆生のために、仏の寿命は永遠であると説き、久しく仏の姿を見た者には、仏を見るのは難しいと説きます。
| 我智力如是、恵光照無量、寿命無数劫、久修業所得 |
私の智恵の力はこのように、その光は無限に照らし、寿命が永遠なのは、長い間の修行により得たものです。
| 汝等有智者、勿於此生疑、当断令永尽、仏語実不虚 |
あなた達智恵のある者は、これを疑ってはならない、疑う心を永遠に断つこと、仏の言葉は偽りなく真実である。
| 如医善方便、為治狂子故、実在而言死、無能説虚妄 |
例えば医者が手段として、迷っている子供たちを治すため、生きているのに死んだと言っても、それと嘘だと言わないように、
| 我亦為世父、救諸苦患者、為凡夫顛倒、実在而言滅 |
私もこの世の父として、あらゆる苦しみを救おうとしています。人々は迷っているので、あえて入滅したと言っているのです。
| 以常見我故、而生憍恣心、放逸著五欲、墮於悪道中 |
私が常に姿を現わしていると、恣（ほしいまま）に驕る心を起こし、欲望に捕われて、悪道に堕ちてしまいます。
| 我常知衆生、行道不行道、随応所可度、為説種種法 |
私は常に衆生が、正しい道を歩んでいるかどうか、救う方法を見極めながら、種々の法を説いています。
| 毎自作是意、以何令衆生、得入無上道、速成就仏身 |
常にこのように念じている、どのようにして衆生が、最高の悟りを得て、速やかに仏として成就できるであろうと。
