フックの法則とは
フックの法則とは、弾性体に加わる力の強さと、それによる変位が比例することを表した法則です。力($F$)と変位($x$)の関係は、比例係数(ばね係数:$k$)により表すことができます。
$$F=kx$$
このときのポテンシャルエネルギー $U$ は、以下で与えられます。
$$U=\frac{1}{2}kx^2$$
フックの法則の一般化
一般的に弾性体の場合は、力と変位はそれぞれ、応力テンソル($p_{ij}$)と歪みテンソル($q_{kl}$)で表されます。尚、1つの項の中に同じ添え字が現れた場合は1~3の和を取ることとし、今後 $\sum$ 記号は省略します。
$$p_{ij}=C_{ijkl}q_{kl}\Big (=\sum_{k=1}^3\sum_{l=1}^3C_{ijkl}q_{kl}\Big)$$
ここで $C_{ijkl}$ は弾性定数と呼ばれており、$i$ と $j$ 、$k$ と $l$ に対し対称テンソルとなります。
このときのポテンシャルエネルギー(弾性歪みエネルギー)$U$ は、以下で与えられます。
$$\delta U=p_{ij}\delta q_{ij}$$$$U=\frac{1}{2}C_{ijkl}q_{ij}q_{kl}$$
歪みテンソル
変形前の $x_i$ の近傍の点 $x_i+\delta x_i$ が、変形後 $x_i’$ の近傍の点 $x_i’+\delta x_i’$ に移動したとします。このときの変位ベクトルは以下で表されます。
$$\delta u_i=\delta x_i’-\delta x_i$$
これを高次の微小量を無視して、
$$\delta u_i=\frac{\partial u_i}{\partial x_j}\delta x_j$$
と書き、対象部分と反対称部分に分けると、
$$\delta u_i=\frac{1}{2}\Big(\frac{\partial u_i}{\partial x_j}-\frac{\partial u_j}{\partial x_i}\Big)\delta x_j+\frac{1}{2}\Big(\frac{\partial u_i}{\partial x_j}+\frac{\partial u_j}{\partial x_i}\Big)\delta x_j$$
この第1項は回転 $\nabla\times{\bf u}$、第2項は歪みテンソル $q_{ij}$ に相当します。
$$q_{ij}\equiv\frac{1}{2}\Big(\frac{\partial u_i}{\partial x_j}+\frac{\partial u_j}{\partial x_i}\Big)$$
回転部分を無視すると、微小変位は以下で表されます。
$$\delta u_i=q_{ij}\delta x_j$$
$$\left(\begin{array}{ccc} \delta u_1 \\ \delta u_2 \\ \delta u_3 \end{array}\right)=
\left(\begin{array}{ccc} q_{11} & q_{12} & q_{13} \\
q_{21} & q_{22} & q_{23} \\
q_{31} & q_{32} & q_{33} \end{array}\right)
\left(\begin{array}{ccc} \delta x_1 \\ \delta x_2 \\ \delta x_3 \end{array}\right)$$
例えば、近傍点 $\delta x_1$ に注目すると、
$$\delta u_1=q_{11}\delta x_1 , \delta u_2=q_{21}\delta x_1 , \delta u_3=q_{31}\delta x_1$$
$q_{11}$ は、$x_1$-軸方向の距離 $\delta x_1$ に比例した、$x_1$-軸方向の変位($q_{11}\gt0$ のときは伸び、$q_{11}\lt0$ のときは縮み)を表します。つまり、歪みテンソルの対角成分は、伸縮歪み(体積歪み)に相当します。
$q_{21}$ は、$x_1$-軸方向の距離 $\delta x_1$ に比例した、$x_2$-軸方向の変位($q_{21}\gt0$ と $q_{21}\lt0$ で方向は逆)を表します。つまり、歪みテンソルの非対角成分は、せん断歪み(等積歪み)に相当します。
応力テンソル
ある面に力を加える場合、気体や液体では面に垂直方向のみ加わりますが、固体では水平方向にも力が加わります。応力テンソル $p_{ij}$ は、面に加わる力 ${\bf F}$ と面の法線 ${\bf n}=(n_1,n_2,n_3)$ の関係として、以下で表すことができます。
$$F_i=p_{ij}n_j$$
$$\left(\begin{array}{ccc} F_1 \\ F_2 \\ F_3 \end{array}\right)=
\left(\begin{array}{ccc} p_{11} & p_{12} & p_{13} \\
p_{21} & p_{22} & p_{23} \\
p_{31} & p_{32} & p_{33} \end{array}\right)
\left(\begin{array}{ccc} n_1 \\ n_2 \\ n_3 \end{array}\right)$$
例えば、$x_2x_3$-面 ${\bf n}=(1,0,0)$ を考えると、この面に働く力は以下で表されます。
$$F_1=p_{11} , F_2=p_{21} , F_3=p_{31}$$
つまり、$p_{11}$ は $x_2x_3$-面に垂直に働く力で、$p_{21}$ は $x_2x_3$-面の $x_2$ 方向、$p_{31}$ は $x_2x_3$-面の $x_3$ 方向に働く力と考えることができます。