南部・後藤作用とは
南部・後藤作用は、相対論的な弦に関する不変量を表します。
$d$ 次元の時空間 $x^\mu=(x^0,x^1,\cdots,x^d)$ での1次元の弦の場合、この弦の時空間での軌跡は、2次元の面(世界面)として表されます。世界面上の座標は2つのパラメタ($\tau,\sigma$)で指定することができ、このパラメタ空間と呼びます。
パラメタ空間の点の時空間への写像を $X^\mu$(弦座標)とすると、
$$X^\mu=(X^0(\tau,\sigma),X^1(\tau,\sigma),\cdots,X^d(\tau,\sigma))$$
南部・後藤作用は以下で表されます。
$$S=\int_{\tau0}^{\tau1}d\tau\int_0^{\sigma1}d\sigma{\mathcal L}(\dot{X}^\mu,X^{\mu’})$$
$$\dot{X}^\mu\equiv\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau} , X^{\mu’}\equiv\frac{\partial X^\mu}{\partial\sigma}$$
ここでラグラジアン密度は、弦の張力を $T_0$、光速度を $c$ とすると、以下で定義されます。
$${\mathcal L}(\dot{X}^\mu,X^{\mu’})=-\frac{T_0}{c}\sqrt{(\dot{X}^\mu X’_\mu)^2-(\dot{X}^\mu\dot{X}_\mu)(X^{\nu’} X’_\nu)}$$
パラメータ付替え不変性
作用積分がパラメータ付けに依らないことが分かる形式で記述します。行列 $\gamma$ を以下で定義すると、
$$\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma} \to \frac{\partial X^\mu}{\partial\xi_\alpha}\frac{\partial X_\mu}{\partial\xi_\beta}\equiv\gamma_{\alpha\beta}$$
$$\gamma_{\alpha\beta}=
\left(\begin{array}{cc} \dot{X}^\mu\dot{X}_\mu & \dot{X}^\mu X’_\mu \\
\dot{X}^\mu X’_\mu & X^{\nu’}X’_\nu \end{array}\right)$$
ラグラジアン密度は以下で表すことができます。
$${\mathcal L}(\dot{X}^\mu,X^{\mu’})=-\frac{T_0}{c}\sqrt{-\det{(\gamma_{\alpha\beta})}}$$
勾配パラメータ
弦の張力の代わりに、エネルギーの2乗の逆数の次元をもつ勾配パラメータ、
$$\alpha\equiv\frac{1}{2\pi T_0\hbar c}$$
を導入すると、南部・後藤のラグラジアン密度は以下で表されます。
$${\mathcal L}(\dot{X}^\mu,X^{\mu’})=-\frac{1}{2\pi\alpha\hbar c^2}\sqrt{(\dot{X}^\mu X’_\mu)^2-(\dot{X}^\mu\dot{X}_\mu)(X^{\nu’} X’_\nu)}$$
南部・後藤作用を導く
面積汎関数
面積汎関数は、時空間での面積要素で、スカラー積で表されるためローレンツ不変量となります。まず、面積汎関数を導きます。
パラメタ空間の微小長方形($d\tau,d\sigma$)から、時空間上の($d\vec{q}_1,d\vec{q}_2$)への写像を次のように表します。
$$dq_1^\mu=\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}d\tau , dq_2^\mu=\frac{\partial X^\mu}{\partial\sigma}d\sigma$$
時空間上では平行四辺形で表されるため、この面積 $dA$ は、$d\vec{q}_1$ と $d\vec{q}_2$ のなす角を $\theta$ とすると以下で表されます。
$$dA=|d\vec{q}_1||d\vec{q}_2||\sin{\theta}|=\sqrt{|d\vec{q}_1|^2|d\vec{q}_2|^2(1-\cos^2{\theta})}$$
スカラー積の記号を使うと、
$$dA=\sqrt{(d\vec{q}_1\cdot d\vec{q}_1)(d\vec{q}_2\cdot d\vec{q}_2)-(d\vec{q}_1\cdot d\vec{q}_2)^2}$$
根号の中は負になるので、順序を入れ替えると面積汎関数が得られます。
$$dA=d\tau d\sigma\sqrt{\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)^2-\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\tau}\Big)\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\sigma}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)}$$
この根号の中が正になることを、以下に示します。
正接ベクトルの条件
世界面上の点 $P$ の正接ベクトルを以下で表します。変数 $k$ の値により、正接ベクトルの向きが時間的であるか空間的でるかが変わります。
$$v^\mu(k)=\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}+k\frac{\partial X^\mu}{\partial\sigma} (-\infty\lt k\lt\infty)$$
正接ベクトルの2乗をとると、
$$v^2(k)=k^2\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\sigma}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)+2k\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)+\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\tau}\Big)$$
このとき、変数 $k$ は実数である必要があるため、$v^2(k)=0$ とした場合の判別式より、以下の条件が導かれます。
$$\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)^2-\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\tau}\Big)\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\sigma}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)\gt0$$
作用を求める
面積汎関数より、固有面積は以下で求められます。
$$A=\int d\tau d\sigma\sqrt{\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)^2-\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\tau}\frac{\partial X_\mu}{\partial\tau}\Big)\Big(\frac{\partial X^\mu}{\partial\sigma}\frac{\partial X_\mu}{\partial\sigma}\Big)}$$
この式からも分かるように、面積汎関数は距離の2乗の次元($L^2$)を持ちます。一方、作用は $ML^2/T$ の次元を持つため、面積汎関数から作用を計算するときの比例定数は、$M/T$ の次元を持つ必要があります。
従って、比例定数を弦の張力と光速度から、$T_0/c$($\sim M/T$)と置いてやることで次元を合わせることができます。
$$S=\frac{T_0}{c}A$$