相続税とは

/税金

相続税

相続税とは、亡くなった人(被相続人)から財産を相続した人や遺贈を受けた人にかかる税金です。相続税の計算の流れは以下になります。

  1. 課税価格の計算
  2. 相続財産の評価
  3. 相続税の総額の計算
  4. 相続人の税額の計算
  5. 税額控除の計算

課税価格の計算

課税価格は以下で計算します。

本来の相続財産 + みなし相続財産 + 相続時精算課税 - 債務・葬儀費用 + 生前贈与加算

本来の相続財産とは、被相続人の財産上の権利の内、相続または遺贈により取得する財産です。具体的には、土地・家屋・金融資産・自動車・金銭債権・電話加入権などです。

みなし相続財産

みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではないが、相続税法で経済的な実態から相続財産とみなして課税の対象とした財産です。以下のものが該当します。

生命保険金 被相続人の死亡によって相続人等が受け取る生命保険金等のうち、被相続人が保険料を負担している部分
生命保険契約
に関する権利
契約者と被保険者が被相続人以外の生命保険契約で、被相続人が保険料を負担している部分。尚、契約者が被相続人の場合は本来の相続財産。
保険や個人年金
に関する権利
相続開始時にまだ給付事由が発生しておらず、かつ被相続人が保険料を負担している部分。尚、契約者が被相続人の場合は本来の相続財産。
退職金手当金 被相続人の死亡によって相続人等が受け取る退職手当金等のうち、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの
相続時精算課税

贈与の際に選択でき、累計2,500万円の特別控除額の範囲であれば贈与税はかかりませんが、それを超えると一律20%の税率で課税されます。

相続時には、本制度を適用した受贈財産の価額を相続財産に加算し、その相続税額から、本制度で支払った贈与税額を控除することができます。

生前贈与加算

相続または遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から財産を贈与されている場合は、その贈与により取得した財産の価額を、相続税の課税価格に加算します。

加算する贈与財産に課税されていた贈与税は、相続税額から控除することができます。

相続財産の評価

宅地の評価

宅地の評価方法には路線価方式と倍率方式があり、さらに利用単位により算出方法が異なります。

路線価方式

路線価方式は、主に市街地がある路線価が付されている宅地で利用され、その宅にの面する路線(道路)に付された路線価(宅地1㎡当りの価額)に地積(面積)を掛けて評価角を求めます。計算方法は、その宅地が面する路線の状態で異なります。

  • 1面だけ道路に面している宅地
    1面だけ道路に面している宅地の評価額は以下で算出されます。

    評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積

    ※尚、奥行価格補正率は、国税庁のホームページで公表されており、地区区分と奥行距離により補正率(1.0~0.8)が異なります。

  • 正面と側面が道路に面している宅地
    正面と側面が道路に面している宅地の評価額は以下で算出されます。ここで正面路線価とは、複数ある路線のうち、”路線価×奥行価格補正率” が最も高くなる路線価です。

    評価額 =(正面路線価 × 奥行価格補正率 + 側方路線影響加算額)× 地積

    ※尚、側方路線影響加算率は、国税庁のホームページで公表されており、地区区分と角地/準角地により加算率(0.1~0.01)が異なります。

  • 正面と裏面が道路に面している宅地
    正面と裏面が道路に面している宅地の評価額は以下で算出されます。

    評価額 =(正面路線価 × 奥行価格補正率 + 二方路線影響加算額)× 地積

    ※尚、二方路線影響加算率は、国税庁のホームページで公表されており、地区区分と角地/準角地により加算率(0.1~0.01)が異なります。

  • 3方または4方が道路に面している宅地
    4方が道路に面している宅地の評価額は以下で算出されます。尚、3方が道路に面している宅地の場合は、正面路線により、上記の③または④が省略されます。

    評価額 =(① + ② + ③ + ④)× 地積

    ①= 正面路線価 × 奥行価格補正率
    ②= 側方路線価 × 側方の奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率(側方路線1)
    ③= 側方路線価 × 側方の奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率(側方路線2)
    ④= 裏面路線価 × 裏方の奥行価格補正率 × 二方路線影響加算率

倍率方式

倍率方式は、路線価が付されていない宅地で利用され、その宅地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて求めます。

評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率

相続税評価額

相続税評価額は、路線価方式または倍率方式により算出した評価額を基に、利用単位により異なる方法で計算されます。宅地は利用単位ごとに1画地とし、利用単位が異なる場合は、それぞれを別画地として評価します。

利用単位は次の5つに区分されています。

  • 自用地
    自分で使用している宅地で、以下で算出されます。尚、自用地には事業目的も含みます。

    評価額 = 路線価方式または倍率方式により算出した評価額
  • 借地権
    建物の所有を目的に他者から借りた宅地の借手側の権利で、以下で算出されます。

    評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合
  • 貸宅地
    借地権がついた土地所有者(低地)の評価で、以下で算出されます。

    評価額 = 自用地評価額 ×(1- 借地権割合)
  • 貸家建付地
    所有する土地に建てた家屋を他者に貸し付けている宅地で、以下で算出されます。

    評価額 = 自用地評価額 ×(1- 借地権割合 × 借家権割合(30%) × 賃貸割合)
  • 貸家建付借地権
    借地人が所有する家屋を他者に貸し付けている場合の土地所有者の評価で、以下で算出されます。

    評価額 = 自用地評価額 ×(1- 借地権割合(30%) × 賃貸割合)

建物の評価

家屋の評価

建物の相続税評価額は固定資産評価額を基に評価されます。

  • 自用家屋の評価
    評価額は以下で計算されます。

    評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率(1.0)
  • 貸家の評価
    貸家は、借家人が使用し、自己の使用に制限があるため、借家権割合(30%)を控除した金額で評価します。

    評価額 = 固定資産税評価額 ×(1-借家権割合(0.3) × 賃貸割合)
付属設備の評価

家屋と構造上一体となっている設備は、家屋の価額に含めて評価します。家屋と一体となっている設備とは、家屋の所有者が有する電気設備、ガス設備、給排水設備、消火設備、昇降設備などが該当します。

相続税の総額の計算

相続税の総額は以下の順に計算します。

  1. 課税遺産総額の計算
  2. 各法定相続人の法定相続分の計算
  3. 各法定相続人の税額の計算
  4. 各法定相続人の税額の合計
1.課税遺産総額の計算

課税遺産総額は、課税価格から基礎控除額を引くことで計算します。

課税遺産総額 = 課税価格 - 基礎控除額
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人
2.各法定相続人の法定相続分の計算

各法定相続人の法定相続分の価額を計算します。法定相続分は以下により定められています。ここで、数字は法定相続分、「×」は不在を表します。

配偶者 兄弟姉妹
1/2 1/2
×
× 2/3 1/3
× 3/4 × 1/4
× × ×
× ×
× × ×
3.各法定相続人の税額の計算

各相続人の税額は、以下の速算表により計算されます。

法定相続分の金額 税率 控除額
~ 1,000万円以下 10%
1,000万円超 ~ 3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超 ~ 5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超 ~ 1億円以下 30% 700万円
1億円超 ~ 2億円以下 40% 1,700万円
2億円超 ~ 3億円以下 45% 2,700万円
3億円超 ~ 6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 ~ 55% 7,200万円
4.各法定相続人の税額の合計

相続税の総額は、各法定相続人の税額の合計することにより得られます。

相続人の税額の計算

各相続人等が負担する税額は、実際の相続割合によって、相続税の総額を案分します。

$$\mbox{各人の算出相続税額}=\frac{\mbox{各相続人等の課税価格}}{\mbox{課税価格の総額}}\times\mbox{相続税の総額}$$

最終的な税額は、2割加算を加え、税額控除を差し引きます。

各相続人の税額 = 各人の算出相続税額 + 2割加算 - 税額控除
2割加算

相続または遺贈により財産を取得した者が次の者以外の場合は、算出税額の2割に相当する金額を加算します。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人の1親等の血族(代襲相続人を含む)

税額控除

税額控除は優先順位があり、次の順序で控除されます。相次相続控除以外は、相続放棄者にも適用されます。

  1. 贈与税控除額
  2. 配偶者の税額軽減
  3. 未成年者控除
  4. 障害者控除
  5. 相次相続控除
  6. 外国税額控除
  7. 相続時精算課税制度ぼ控除
贈与税額控除

相続または遺贈により財産を取得した者に生前贈与が行われている場合は、その贈与にかかる贈与税額を、その者の残出税額から控除することができます。

$$\mbox{贈与税額控除}=\mbox{その年の贈与税額}\times\frac{\mbox{相続税の課税価格に加算された贈与財産}}{\mbox{その年の贈与税の課税価格}}$$
配偶者の税額控除

配偶者が相続または遺贈により取得した財産の合計額が、法定相続分または1億6千万円以下であれば、相続税額は0になります。

未成年者控除

相続または遺贈により財産を取得した法定相続人で20歳未満の者は、未成年者控除額がその者の算出税額を超える場合は、その超える金額を、その者の扶養義務者の算出税額から差し引くことができます。

未成年者控除 =(20歳 - 相続開始の年齢)× 10万円
障害者控除

相続または遺贈により財産を取得した法定相続人で85歳未満の障害者で、障害者控除額がその者の算出税額を超える場合は、その超える金額を、その者の扶養義務者の算出税額から差し引くことができます。

障害者控除(一般障害者)=(85歳 - 相続開始の年齢)× 10万円
障害者控除(特別障害者)=(85歳 - 相続開始の年齢)× 20万円
相次相続控除

相続開始前10年以内に被相続人が相続、遺贈や相続時精算課税制度にかかる贈与によって財産を取得し相続税が課せられていた場合には、その被相続人から、それらによって財産を取得した者の相続税額から一定の金額を控除することができます。

外国税額控除

相続または遺贈により取得した財産の中に国外財産があり、その国外財産につき、財産が所在する国の相続税に相当する税が課せられている場合、二重課税を防止するために適用されます。

相続時精算課税制度の控除

相続時精算課税制度による生前贈与を課せられた贈与税額は相続税額から控除できます。その際、相続税額から控除しきれない贈与税額は全額還付されます。

 

FP
金融資産、年金・保険、税金、不動産、相続
散策路TOP
数学、応用数学、古典物理、量子力学、物性論、電子工学、IT、力学、電磁気学、熱・統計力学、連続体力学、解析学、代数学、幾何学、統計学、論理・基礎論、プラズマ物理、量子コンピュータ、情報・暗号、機械学習、金融・ゲーム理論

Wikipedia

 

タイトルとURLをコピーしました