概要
法相宗は、インド瑜伽行派(唯識派)の思想を継承する宗派で、7世紀の中国で成立しました。日本へは7世紀に伝わり、南都六宗、日本十三宗の1つとなっています。
- 時代:7世紀~
- 宗祖:窺基(きき)
- 所依:世親 「唯識三十頌」
唯識論はインドから戻った玄奘(げんじょう)により伝えられ、玄奘の弟子である窺基によって宗派が開かれました。この時代の仏教宗派は学派的なものであり、寺が固定されたり、教団となったりすることは少ないとされています。
日本の法相宗
道昭(どうしょう)が7世紀に入唐留学して玄奘に師事し、帰国後飛鳥法興寺で法相宗を広めました。その後、平城右京に元興寺が創建され、元興寺伝(南伝)と呼ばれています。
8世紀に入唐した玄昉(げんぼう)は法相を修め、帰国後、興福寺にてこれを広めました。この流れは興福寺伝(北伝)と呼ばれています。9世紀にかけて法相宗は隆盛を極め、多くの学僧が輩出しました。
教義
法相宗の宗意の根本は唯識であり、どんなものも心外に存在するものではないと考えます。心の外に物が存在すると考えるから生死の世界に輪廻しているのであって、心の外に存在している物も一心の現れであることを知れば、生死の苦しみを捨てることができると説きます。
三時教判
法相宗では以下のような教判を立てて全仏教の教えをおさめるとしています。
- 初時:有教(小乗教)
諸法に実体にを認めるという教え。 - 二時:空教(般若部の説)
我にもその要素である法にも実体は存在しない教え。 - 三時:中道教(華厳等の説)
三性三無性(遍計所執性・依他起性・円成実性と相無性・生無性・勝義無性)を説き、有と無の偏った考え方を離れて、正しい道に入るための教え。三性とは遍計所執性・依他起性・円成実性、三無性とは相無性・生無性・勝義無性を指す。
三性説
三性とは、遍計所執性、依他起性、円成実性の3つで、人が縁起を覚るまでの過程を表します。
- 遍計所執性(へんげしょしゅうしょう)
全ての諸法が有実であると執着すること。縁起に気付いていない凡夫の日常の認識。 - 依他起性(えたきしょう)
他によって起こることで、縁起のこと。諸仏は条件が集まって仮の姿で存在している。 - 円成実性(えんじょうじっしょう)
真如自体を指す。縁起を覚って円らかになる。
三乗五性
三乗とは、声聞乗、縁覚乗、菩薩乗の3つで、人間が悟りの境界へ至るための教え(乗物)を意味しています。菩薩乗が最上位とされています。
- 声聞乗(しょうもんじょう)
仏陀の教え(声)を聞いて覚る者。 - 縁覚乗(えんがくじょう)
仏陀の教えによらずに独力で十二因縁を覚る者。 - 菩薩乗(ぼさつじょう)
自らのみならず、一切の人間の覚りのために修行している者。
五性とは、定性声聞、定性縁覚、定性菩薩、不定種性、無性有情の5つです。
- 定性声聞(じょうしょうしょうもん)
三乗のうち、声聞乗を指す。 - 定性縁覚(じょうしょうえんがく)
三乗のうち、縁覚乗を指す。 - 定性菩薩(じょうしょうぼさつ)
三乗のうち、菩薩乗を指す。 - 不定種性(ふじょうしゅしょう)
三乗の種性いずれにも確定しない者。 - 無性有情(むしょううじょう)
仏性の種子(しゅうじ)を全く有しておらず、成仏する可能性がない者。
宗教・思想
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