医療保険
医療保険とは、医療機関の受診により発生した医療費について、加入者全員が事前に納めた保険料から保険者に給付する仕組みの保険です。医療保険には、加入義務がある公的医療保険制度と、民間保険会社が提供する任意加入の医療保険があります。
日本国内に住所を有する国民および1年以上の在留資格がある外国人に対し、公的医療保険に加入するように定められています。公的医療保険制度は、以下の保険制度から構成されます。
制度 | 保険者 | 対象 | 法律 |
国民健康保険 | 市(区)町村 | 他の公的医療保険制度の未加入者 | 国民健康保険法等 |
健康保険 | 健康保険組合 (組合健保) |
主に大企業被用者など | 健康保険法 |
全国健康保険協会 (協会けんぽ) |
主に中小企業被用者など | ||
共済組合 | 各種共済組合 | 公務員および私立学校教職員 | 国家公務員共済組合法等 |
船員保険 | 全国健康保険協会 | 船員として船舶所有者に使用される者 | 船員保険法 |
後期高齢者医療制度 | 後期高齢者医療広域連合 | 満75歳以上の高齢者 | 高齢者の医療の確保に関する法律 |
国民健康保険
国民健康保険は、被用者保険や後期高齢者医療制度などに加入していない一般地域住民のための医療保険制度です。都道府県および市町村(特別区を含む)が保険者となる市町村国保と、業種ごとに組織される国民健康保険組合から構成されています。
被保険者
日本国内に住所を有し、以下に該当しない場合は国民健康保険の被保険者となります。
- 被用者保険や後期高齢者医療制度などに加入していない
- 生活保護を受けている
- 短期滞在在留外国人
国民健康保険の被保険者は次の2つのケースがあります。
- 保険者が国民健康保険組合以外の場合
市区町村の区域内に住所を有する者は被保険者とされます。 - 保険者が国民健康保険組合の場合
組合員および組合員の世帯に属する者は被保険者とされます。
国民健康保険の被保険者になる場合や脱退する場合は、14日以内に住所のある市町村の国民健康保険の窓口(国民健康保険組合の場合は国民健康保険組合の窓口等)まで関係書類を提出する必要があります。
保険料(税)
保険者が都道府県および市区町村である場合は、国民健康保険税にするか国民健康保険料にするかは任意です。現在では多くの市区町村が保険税としています。
国民健康保険料(税)の算定方法や徴収期限・方法は、各市町村の条例(国民健康保険組合の場合は規約)などで定められています。国民健康保険料(税)は、世帯単位で算定し、世帯の被保険者ごとに応益分・応能分が計算されます。
- 応益分:療養の給付に応じた保険料(税)
- 応能分:負担能力に応じた保険料(税)
応益分 | 均等割 | 世帯に属する被保険者数(子供を含む)に応じて賦課 |
平等割 | 世帯ごとの賦課 | |
応能分 | 所得割 | 世帯に属する被保険者の所得に応じた賦課 |
資産割 | 世帯に属する被保険者の固定資産税に応じた賦課 |
給付
国民健康保険の給付には次の種類があります。
法定給付 | 絶対的必要給付 | 療養または療養費、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問介護療養費、特別療養費、移送費、高額療養費、高額介護合算療養費 |
相対的必要給付 | 出産育児一時金、葬祭または葬祭費 | |
任意給付 | 傷病手当金、その他 |
健康保険
健康保険は、被保険者とその被扶養者が業務外および通勤途上外の原因による疾病・負傷・出産・死亡などの保険事故が生じた場合の短期給付です。
適用事業所
適用事業所とは、労働者が健康保険に加入することが義務づけられる事業所で、事業所単位で適用の有無が決定されます。適用事業所には以下の種類があります。
- 強制適用事業所
健康保険への加入が義務付けられている事業所です。下記いずれかの条件に該当している場合は強制適用事業所となります。- 株式会社や合同会社などの法人事業主
- 従業員を5人以上雇用しており、法定16業種および士業に該当する個人事業主
- 任意適用事業所
加入の義務がなく、特定の手続きを踏むことで健康保険に加入できます。個人事業所が対象となります。 - 特定適用事業所
1年のうち6か月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者数が101人以上となることが見込まれる企業です。
被保険者
適用事業部に常用雇用されていれば、国籍・性別・年齢・賃金の額などに関係なく全て対象地なります。但し、以下のような適用除外があります。下記のいずれかに該当する人は、国民健康保険など他の医療保険に加入する必要があります。
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被保険者の資格取得日と資格喪失日の条件は以下になります。
- 資格取得日
- 適用事業所に使用されるようになった日
- 使用されている事業所が新たに適用事業所になった日
- 被保険者から適用除外される事由に該当しなくなった日
- 任意適用事業所として認可された日
- 資格喪失日
- 適用事業所に使用されなくなった日の翌日
- 被保険者から適用除外される事由に該当した日の翌日
- 任意適用事業所が任意脱退の認可を受けた日の翌日
- 死亡した日の翌日
被扶養者になるための条件は以下になります。
- 被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、被保険者に生計を維持されている人
- 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている以下の人
- 被保険者の三親等以内の親族(1に該当する人を除く)
- 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
- 2の配偶者が亡くなった後における父母および子
被扶養者の収入基準は以下になります。
- 被保険者と同一世帯に属している場合
年齢 収入 60歳未満 年間収入が130万未満かつ、被保険者の年間収入の1/2未満 60歳以上/障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者 年間収入が180万未満かつ、被保険者の年間収入の1/2未満 - 被保険者と同一世帯に属していない場合
年齢 収入 60歳未満 年間収入が130万未満かつ、被保険者からの援助による収入額より少ないこと 60歳以上/障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障がい者 年間収入が180万未満かつ、被保険者からの援助による収入額より少ないこと
給付
保険給付には、医療を給付する現物給付と治療費などを給付する現金給付があります。また、被保険者本人が給付を受ける場合は本人給付、扶養家族が給付を受ける場合は家族給付と呼びます。
- 病気やケガの場合
- 療養の給付(家族療養費)
- 入院時食事療養費(家族療養費)
- 入院時生活療養費(家族療養費)
- 保険外併用療養費(家族療養費)
- 療養費(家族療養費)
- 高額療養費
- 高額介護合算療養費
- 傷病手当金
- 出産の場合
- 出産育児一時金(家族出産育児一時金)
- 出産手当金
- 死亡した場合
- 埋葬料(家族埋葬料)
保険料
医療費用の一部は労働者が自己負担することになっています。負担割合は、被保険者および被扶養者の年齢や所得によって変わります。尚、75歳以上の高齢者は、健康保険制度ではなく、後期高齢者医療制度が適用されます。
区分 | 一般・低所得者 | 現役並み所得者 |
70歳以上 | 2割負担 | 3割負担 |
70歳未満 | 3割負担 | |
義務教育就学前 | 2割負担 |
毎月の保険料は、標準報酬月額と標準賞与額に対して一定の率を掛けた金額が徴収されます。標準報酬月額は、給料などの報酬月額を区分したもので、標準賞与額は税引き前の賞与総額から千円未満を切り捨てた額です。
- 協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに設定され、労使折半での負担となります。
- 健康保険組合の保険料率は組合により異なり、各組合の規約より1000分の30から1000分の130の範囲で設定されます。被保険者の負担割合も規約により定められていますが、被保険者の負担が事業主の負担を超えることはできません。