重力場のニュートン近似

/相対論

重力場の方程式

アインシュタインの重力場の方程式は、万有引力や重力場を記述するための方程式で、ニュートンの万有引力の法則を、強い重力場にも適用できるよう拡張されています。

物質が存在しない空間とは、重力以外どんな物理的な場も存在しない空間です。このときアインシュタイン方程式は、リッチテンソルを0とすることで表されます。

$$R_{ij}=0  -①$$

ここでリッチテンソルは、リーマン曲率テンソルの縮約によって求められます。ここで、カンマ(,)は微分 $A_{,i}\equiv\partial A/\partial x^i$ を表します。

$$R_{ij}\equiv R^k_{ijk}=\Gamma_{ik,j}^k-\Gamma_{ij,k}^k+\Gamma_{ik}^m\Gamma_{mj}^k-\Gamma_{ij}^m\Gamma_{mk}^k$$

ニュートン近似

ニュートン近似のため、次の3つの仮定を置きます。

  1. 重力場は静的である。
    ⇒計量の時間微分を0とする($g_{ij,0}=0$)
  2. 重力場の曲率は小さい。
    ⇒クリトッフェル記号を1次の微小量として、2次の項を省略する。
  3. 光速に比べ遅い速度とする。
    ⇒速度($v^i=dx^i/ds$)を1次の微小量として、2次の項を省略する。

運動方程式のニュートン近似

運動方程式は、以下の測地線の方程式として与えられます。

$$\frac{d^2x^i}{ds^2}+\Gamma^i_{jk}\frac{dx^j}{ds}\frac{dx^k}{ds}=0  -②$$

これにニュートン近似を行うと以下が得られます。

$$\frac{d^2x^i}{dt^2}=\frac{1}{2}c^2\frac{\partial g_{00}}{\partial x^i}  -③$$

これは、重力ポテンシャルを $V$ としたときのニュートン方程式を表しています。

$$\frac{d^2x^i}{dt^2}=-\frac{\partial V}{\partial x^i}$$

これと③が近似的に同じ運動を与えるための条件として、

$$\frac{\partial}{\partial x^i}\Big(\frac{1}{2}c^2g_{00}-V\Big)=0$$

括弧の中を定数として値を調整すると以下が得られます。

$$g_{00}=1+\frac{2V}{c^2}  -④$$

尚、重力ポテンシャルは以下で表されます。

$$V=-\frac{Gm}{r}$$

③を導く

仮定3より、速度($v^i$)の大きさを無視すると、

$$\frac{d^2x^i}{ds^2}+\Gamma^i_{00}\frac{dx^0}{ds}\frac{dx^0}{ds}=0  -(1)$$

まず $dt/ds\simeq 1$ で書き換えると、

$$\frac{d^2x^i}{ds^2}\simeq\frac{d^2x^i}{dt^2}$$

$$\frac{dx^0}{ds}\simeq c$$

クリストッフェル記号は仮定1より、

$$\Gamma^i_{00}=g^{ij}\Gamma_{j00}=-\frac{1}{2}g_{00,i}$$

これらを(1)に代入すると、

$$\frac{d^2x^i}{dt^2}-\frac{1}{2}c^2g_{00,i}=0$$

これより③が得られます。

重力場のニュートン近似

アインシュタイン方程式①は、仮定1により、

$$g^{kl}\Big(\frac{\partial^2g_{lk}}{\partial x^i\partial x^j}-\frac{\partial^2g_{ik}}{\partial x^l\partial x^j}-\frac{\partial^2g_{lj}}{\partial x^i\partial x^k}+\frac{\partial^2g_{ij}}{\partial x^l\partial x^k}\Big)=0  -⑤$$

$i=j=0$ とて、仮定3により以下になります。

$$g^{kl}\frac{\partial^2g_{00}}{\partial x^k\partial x^l}=0  -⑥$$

ここで、$g_{00}$ を④と置くと以下が得られます。

$$g^{kl}\frac{\partial^2V}{\partial x^k\partial x^l}=0  -⑦$$

これより、$V$ はラプラスの方程式を満たし、運動方程式のポテンシャルの役割りを果たすことが分かります。

$$\nabla^2V=0$$

⑤の導出

①をリーマン曲率テンソルで表すと以下になります。

$$R_{ij}=R^k_{ijk}=g^{kl}R_{lijk}=0  -(2)$$

リーマン曲率テンソルは仮定3により以下になります。

$$R_{lijk}=g_{lm}R^m_{ijk}$$$$=g_{lm}\Big(\frac{\partial\Gamma^m_{ik}}{\partial x^j}-\frac{\partial\Gamma^m_{ij}}{\partial x^k}+\Gamma^n_{ik}\Gamma^m_{nj}-\Gamma^n_{ij}\Gamma^m_{nk}\Big)$$$$\cong\frac{\partial\Gamma_{lik}}{\partial x^j}-\frac{\partial\Gamma_{lij}}{\partial x^k}$$

クリストッフェル記号の定義を代入すると、

$$=\frac{1}{2}\frac{\partial}{\partial x^j}\Big(\frac{\partial g_{li}}{\partial x^k}+\frac{\partial g_{lk}}{\partial x^i}-\frac{\partial g_{ik}}{\partial x^l}\Big)-\frac{1}{2}\frac{\partial}{\partial x^k}\Big(\frac{\partial g_{li}}{\partial x^j}+\frac{\partial g_{lj}}{\partial x^i}-\frac{\partial g_{ij}}{\partial x^l}\Big)$$$$=\frac{1}{2}\Big(\frac{\partial^2g_{lk}}{\partial x^i\partial x^j}-\frac{\partial^2g_{ik}}{\partial x^l\partial x^j}-\frac{\partial^2g_{lj}}{\partial x^i\partial x^k}+\frac{\partial^2g_{ij}}{\partial x^l\partial x^k}\Big)$$

これを (2) に代入すると、⑤が得られます。

$$g^{kl}\Big(\frac{\partial^2g_{lk}}{\partial x^i\partial x^j}-\frac{\partial^2g_{ik}}{\partial x^l\partial x^j}-\frac{\partial^2g_{lj}}{\partial x^i\partial x^k}+\frac{\partial^2g_{ij}}{\partial x^l\partial x^k}\Big)=0$$

ここで、$i=j=0$ とすると、

$$g^{kl}\Big(\frac{\partial^2g_{lk}}{\partial x^0\partial x^0}-\frac{\partial^2g_{0k}}{\partial x^l\partial x^0}-\frac{\partial^2g_{l0}}{\partial x^0\partial x^k}+\frac{\partial^2g_{00}}{\partial x^l\partial x^k}\Big)=0$$

仮定により、計量の時間微分は0になるため、⑥が導かれます。

 

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