エルミート多項式
エルミート多項式は以下で定義されます。
$$H_n(x)\equiv(-1)^ne^{x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{-x^2} -①$$
このときエルミート多項式の母関数は(②の導出)、
$$\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}H_n(x)=e^{2xz-z^2} -②$$
一般項は以下になります(③の導出)。
$$H_n(x)=n!\sum_{m=0}^{n/2}\frac{(-1)^m(2x)^{n-2m}}{m!(n-2m)!} -③$$
このエルミート多項式は、次のエルミート微分方程式の解として得られ(④の導出)、
$$\Big(\frac{d^2}{dx^2}-2x\frac{d}{dx}+2n\Big)H_n(x)=0 -④$$
以下の直交条件が成り立ちます(⑤の導出)。
$$\int^{\infty}_{-\infty}H_n(x)H_m(x)e^{-x^2}dx =\delta_{mn}\sqrt{\pi}2^nn! -⑤$$
また、エルミート多項式は以下の性質を持ちます。
$$e^{-x^2/2}H_{n+1}(x)=\Big(x-\frac{d}{dx}\Big)e^{-x^2/2}H_n(x) -⑥$$$$2ne^{-x^2/2}H_{n-1}(x)=\Big(x+\frac{d}{dx}\Big)e^{-x^2/2}H_n(x) -⑦$$
⑥と⑦は①を代入することで確認することができます。特に⑦は以下の関係を利用します(⑧の導出)。
$$\frac{d}{dx}H_n(x)=2nH_{n-1}(x) -⑧$$
式の導出
②の導出
$$f(x)=\frac{n!}{2\pi i}\int_C\frac{f(\xi)}{(\xi-z)^{n+1}}d\xi$$
で、$f(x)=e^{-x^2}$ と置いて、①に適用すると、
$$H_n(x)=(-1)^ne^{x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{-x^2}=\frac{(-1)^nn!e^{x^2}}{2\pi i}\int\frac{e^{-\xi^2}d\xi}{(\xi-x)^{n+1}}$$
両辺に $z^n$ を掛け書き換えると、
$$e^{-x^2}\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}H_n(x)=\frac{1}{2\pi i}\int\frac{e^{-\xi^2}d\xi}{\xi-x}\sum_{n=0}^\infty\Big(\frac{-z}{\xi-x}\Big)^n$$$$=\frac{1}{2\pi i}\int\frac{e^{-\xi^2}d\xi}{\xi-x+z}$$
$|z|$ は十分小さいとして、留数定理を適用すると以下が得られます。
$$e^{-x^2}\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}H_n(x)=e^{-(x-z)^2}$$
これより、エルミート多項式の母関数が求められます。
③の導出
②の右辺を級数展開すると、
$$\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}H_n(x)=e^{2xz-z^2}=\sum_{k=0}^\infty\frac{(2xz-z^2)^k}{k!}$$
分子を二項定理で展開すると、
$$=\sum_{k=0}^\infty\sum_{m=0}^k\frac{k!}{(k-m)!m!}\frac{(2xz)^{k-m}(-z^2)^m}{k!}$$$$=\sum_{k=0}^\infty\sum_{m=0}^k\frac{(-1)^m(2x)^{k-m}}{(k-m)!m!}z^{k+m}$$
ここで、$n=m+k$ と置き替えると、$k$ 、$m$ 、$n$ の組み合わせは以下になるため、
$k$ | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | $\cdots$ | |||||||||||||||
$m$ | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 2 | 0 | 1 | 2 | 3 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | $\cdots$ |
$n$ | 0 | 1 | 2 | 2 | 3 | 4 | 3 | 4 | 5 | 6 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | $\cdots$ |
$n$ と $m$ の組合せは以下のようになります。
$n=0$ | $n=1$ | $n=2$ | $n=3$ | $n=4$ | $n=5$ | $\cdots$ |
$m=0$ | $m=0$ | $m=0\sim1$ | $m=0\sim1$ | $m=0\sim2$ | $m=0\sim2$ | $\cdots$ |
これにより $k$ を消去すると、以下のように書き換えることができます。
$$\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}H_n(x)=\sum_{n=0}^\infty\sum_{m=0}^{n/2}\frac{(-1)^m(2x)^{n-2m}}{(n-2m)!m!}z^n$$
これより③が得られます。
④の導出
②の両辺に、$d/dx$、$d^2/dx^2$、$zd/dz$ を作用させると、
$$\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}\frac{dH_n}{dx}=2ze^{2xz-z^2} -(1)$$$$\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}\frac{d^2H_n}{dx^2}=4z^2e^{2xz-z^2} -(2)$$$$\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}nH_n=2(xz-z^2)e^{2xz-z^2} -(3)$$
これらの式で、以下のように両辺の和を取ると、
$$(2)-2x\times(1)+2\times(3)$$$$=\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}\Big(\frac{d^2H_n}{dx^2}-2x\frac{dH_n}{dx}+2nH_n\Big)$$$$=\Big(4z^2-4xz+4(xz-z^2)\Big)e^{2xz-z^2}=0$$
これより、エルミート微分方程式を満たすことが分かります。
⑤の導出
$x^m$($m\lt n$)を掛けての積分に①を代入すると、
$$\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}x^mH_ndx=(-1)^n\int_{-\infty}^\infty x^m\Big(\frac{d}{dx}\Big)^ne^{-x^2}dx$$
右辺の積分に部分積分法を使うと、
$$\int_{-\infty}^\infty x^m\Big(\frac{d}{dx}\Big)^ne^{-x^2}dx$$$$=\Big[x^m\Big(\frac{d}{dx}\Big)^{n-1}e^{-x^2}\Big]_{-\infty}^\infty-\int_{-\infty}^\infty mx^{m-1}\Big(\frac{d}{dx}\Big)^{n-1}e^{-x^2}dx$$
さらに、左辺第2項に部分積分法を使うと、
$$\int_{-\infty}^\infty mx^{m-1}\Big(\frac{d}{dx}\Big)^{n-1}e^{-x^2}dx$$$$=\Big[mx^{m-1}\Big(\frac{d}{dx}\Big)^{n-2}e^{-x^2}\Big]_{-\infty}^\infty-\int_{-\infty}^\infty m(m-1)x^{m-2}\Big(\frac{d}{dx}\Big)^{n-2}e^{-x^2}dx$$
これを繰り返すと、$m\lt n$ であるため、右辺は定積分で置き換えることができます。そして、$x\to\pm\infty$ で被積分関数は $0$ となるので、定積分は0になります。
$$\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}x^mH_ndx=(-1)^n\sum_{l=0}^m(-1)^lm(m-1)\cdots$$$$\cdots(m-l+1)\Big[x^{m-l}\Big(\frac{d}{dx}\Big)^{n-l-1}e^{-x^2}\Big]_{-\infty}^\infty=0$$
従って、$m\ne n$ の場合の⑤が0になることが分かります。次に、$m=n$ については、③より $H_n$ の $x^n$ の係数は $2^n$ であるため、
$$\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}H_n^2dx=2^n\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}x^nH_ndx$$
これに①を代入して、先と同様に部分積分を繰返すと、$m=n$ であれば積分の項が残るため、
$$\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}H_n^2dx=2^nn!\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx=\sqrt{\pi}2^nn!$$
これより⑤が導かれます。
⑧の導出
②の両辺を $x$ で微分すると、
$$\sum_{n=1}^\infty\frac{z^n}{n!}\frac{d}{dx}H_n(x)=2z\sum_{n=0}^\infty\frac{z^n}{n!}H_n(x)$$$$\sum_{n=0}^\infty\frac{z^{n+1}}{(n+1)!}\Big(\frac{d}{dx}H_{n+1}(x)-2(n+1)H_n(x)\Big)=0$$
これより⑧が導かれます。