神道
神道は、山や川などの自然や自然現象を敬い、それらに八百万(やおよろず)の神を見いだす多神教です。神道においては自然と神とは一体として認識され、神と人間とを結ぶ作法が祭祀であり、その祭祀を行う場所が神社であるされました。
神道は、古代日本に起源を持ち、伝統的な民俗信仰・自然信仰を基盤にして、弥生時代から古墳時代にかけてその原型が形成されたと考えられています。神道には特定の教祖や創始者がおらず、明確な聖典もありませんが、古事記や日本書紀などの古典が「神典」とされています。
このようなことから、一言に神道と言っても様々な要素や側面を持っています。そのため、以下は古神道、神社神道、民間信仰の観点から説明したいと思います。
古神道
古神道は、自然崇拝・精霊崇拝・祖霊崇拝などと関連が深く、命・御魂・霊・神などの概念を持ちます。記紀(古事記と日本書紀)などの古典に根拠を置き、儒仏の要素を混じえない神道とされます。
自然に存在する岩や山、海や川などは神の宿る場所であり、神の住む世界との境界と考えられています。それらは神聖な場所とされ、禁足地とされています。このような自然崇拝は、神籬(ひもろぎ)・磐座(いわくら)信仰として現在にも伝えられています。
山岳信仰は自然崇拝の一種で、日本での古来より、水源や狩猟の場などから得られる恵みや、雄大な容姿に対する畏怖の念から、山や森は神が居る場所とされ信仰の対象となってきました。密教などの流れをくんだ修験者などによる修行の場でもありました。
- 神籬(ひもろぎ)
神道において神社や神棚以外の場所で祭祀を行う際の、臨時に神を迎えるための依り代となるものです。 - 磐座(いわくら)
古神道における岩に対する信仰、あるいは、信仰の対象となる神が宿る岩そのものを指します。 - 修験道(しゅげんどう)
山岳信仰に仏教(密教)や道教(九字切り)などの要素が融合しながら成立した日本独自の信仰形態です。
神社神道
ここでの神社神道とは、第二次世界大戦後の神社を中心に行われる祭祀儀礼を指します。神社神道には教典は存在せず、古事記や日本書紀などの神典に則り神職が祭祀を行います。
神社は神社本庁により包括され、登録されている神社だけでも全国に8万社以上、登録されていない小神社を含めると日本各地に10万社を超えます。
神社の起源は、神が鎮座するとされた磐座などでの祭事の際に建てた祭壇です。古い神社には、現在でも社殿がないものも存在します。
祭祀対象は多彩で、神聖とされた山岳や河川などから、日本古来の神に属さない民俗神、実在の人物・伝説上の人物や、仏教の神仏や道教の神なども含まれています。
- 神社本庁
神宮(伊勢神宮)を本宗とし、宗教法人法に基づく文部科学大臣所轄の包括宗教法人です。 - 社殿
神社の建造物のことで、本殿・幣殿・拝殿・神楽殿などにより構成されます。 - 鎮守の杜
神社(鎮守神)の境内やその周辺に神殿や参道、拝所を囲むように設定され、維持されている森林です。
民俗信仰
民俗信仰とは、民間でおこなわれてきた信仰行事ですが、仏教や道教の思想と習合している場合も多く見られます。信仰対象としては、道祖神、田の神、山の神などがあります。
道祖神は、厄災の侵入防止や子孫繁栄等を祈願するために、村の守り神として主に道の辻に祀られている石仏です。自然石または石碑や石像などの様々な形態のものが残っています。
山の神は山に宿る神の総称で、田の神は農耕民の間で稲作の豊穣をもたらすと信じられています。農民の間では、春になると山の神が山から降りてきて田の神となり、秋には再び山に戻るという言い伝えがあります。
- 氏神(うじがみ)
同じ集落に住む人々が共同で祀る神道の神のことです。同じ氏神を信仰する者同士は氏子(うじこ)と呼ばれています。 - 産土神(うぶすながみ)
その者が産まれた土地の神であり、その者を一生守護すると考えられています。 - 鎮守神(ちんじゅがみ)
ある一定区域の土地を守護するために祀られた神で、氏神や産土神と同一に扱われることもあります。鎮守神を祀る社は鎮守社と呼ばれています。