プラズマ振動とは

/プラズマ物理

プラズマ振動とは、プラズマ中の電子が、質量の重いイオンを中心に起こす単振動です。プラズマ振動は、熱運動がない場合とある場合で異なります。

熱運動がない場合のプラズマ振動

熱運動($k_BT$)が無い場合のプラズマ振動数 $\omega_p$ は以下になります。ここで、$e$ は電荷、$m$ は電子の質量、$n_0$ は単位体積当たりの電子数です。

$$\omega_p^2=\frac{n_0e^2}{m\epsilon}  -①$$

また、磁場はなく、イオンの分布は一様で固定されていると仮定します。

導出

2流体プラズマの基本方程式のうち、電子の連続の方程式と運動方程式、ポアソンの方程式(マクスウェル方程式)は以下になります。運動方程式の磁場と熱運動(圧力)の項は削除しています。

$$\frac{\partial n_e}{\partial t}+\nabla\cdot(n_e{\bf v}_e)=0  -②$$$$mn_e\frac{\partial{\bf v}_e}{\partial t}+mn_e({\bf v}_e\cdot\nabla){\bf v}_e=-en_e{\bf E}  -③$$$$\nabla\cdot{\bf E}=\frac{e}{\epsilon}(n_i-n_e)  -④$$

ここで、各変数を一様な部分(添え字0)と振動する部分(添え字1)に分け、

$$n_e=n_0+n_1$$$$n_i=n_{i0}+n_{i1}$$$${\bf v}_e={\bf v}_0+{\bf v}_1$$$${\bf E}={\bf E}_0+{\bf E}_1$$

次の条件を置きます。

$${\bf v}_0={\bf E}_0=0$$$$\frac{dn_0}{dt}=\nabla n_0=0$$$$n_{i1}=0$$$$n_0=n_{i0}$$

最後2つは、イオンは固定しており、平衡状態であるとする条件です。これらを②~④に代入し、2次の微小項を省略すると以下のように書き直されます。

$$\frac{\partial n_1}{\partial t}+n_0\nabla\cdot{\bf v}_1=0  -②’$$$$m\frac{\partial{\bf v}_1}{\partial t}=-e{\bf E}_1  -③’$$$$\nabla\cdot{\bf E}_1=-\frac{en_1}{\epsilon}  -④’$$

次に、振動する部分は正弦的であると仮定すると、

$$n_1=n_1e^{i(kx-\omega t)}$$$${\bf v}_1=\Big(v_1e^{i(kx-\omega t)},0,0\Big)$$$${\bf E}_1=\Big(E_1e^{i(kx-\omega t)},0,0\Big)$$

②’~④’ は次のように書き替えられます。

$$-i\omega n_1+ikn_0v_1=0$$$$-i\omega mv_1=-eE_1  -⑤$$$$ikE_1=-\frac{en_1}{\epsilon}$$

これらより、$n_1,E_1,v_1$ を消すと①が得られます。

$$\omega^2=\frac{n_0e^2}{m\epsilon}  \to①$$

熱運動がある場合のプラズマ振動

熱運動がある場合のプラズマ振動数は以下になります。ここで、$\gamma$ は比熱比、$k_B$ はボルツマン定数、$T$ は電子の温度です。尚、右辺第1項は、熱運動がない場合のプラズマ振動です。

$$\omega^2=\omega_p^2+\frac{\gamma k_BT}{m}k^2  -⑥$$$$\gamma=\frac{C_p}{C_v}$$

導出

熱運動がある場合は、運動方程式③の右辺に圧力項が加わります。

$$mn_e\frac{\partial{\bf v}_e}{\partial t}+mn_e({\bf v}_e\cdot\nabla){\bf v}_e=-en_e{\bf E}-\nabla p  -⑦$$

この圧力項を書き換えるため、次の状態方程式を使います。

$$p=C\rho^\gamma$$

この両辺の対数をとり、微分すると $\nabla p/p=\gamma\nabla\rho/\rho$ であるから、$\rho=mn_e$ と $p=n_ek_BT$ を使うと、

$$\nabla p=\frac{\gamma p}{\rho}\nabla\rho=\frac{\gamma p}{n_e}\nabla n_e=\gamma k_BT\nabla n_e$$

これにより、⑦は以下になります。

$$mn_e\frac{\partial{\bf v}_e}{\partial t}+mn_e({\bf v}_e\cdot\nabla){\bf v}_e=-en_e{\bf E}-\gamma k_BT\nabla n_e$$

変数を一様な部分と振動する部分に分けると、

$$mn_0\frac{\partial{\bf v}_1}{\partial t}=-en_0{\bf E}_1-\gamma k_BT\nabla n_1$$

振動する部分は正弦的であると仮定すると、

$$-i\omega mn_0v_1=-en_0E_1-ik\gamma k_BTn_1$$

これを⑤の代わりに使って同様な計算をすると、以下になります。

$$\omega^2=\frac{e^2n_0}{m\epsilon}+\frac{\gamma k_BT}{m}k^2  \to⑥$$

 

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