情報伝送速度とは

/情報・暗号

情報伝送速度

情報伝送速度とは、ノイズのある通信路を通して、実際に送信することのできる単位時間当たりの情報量(エントロピー)です。

ノイズのある通信路においては、送信データはノイズの影響を受けるため、送信信号と受信信号は必ずしも一致しません。受信信号を見ることにより、送信信号を推測することはできますが、不確定度が残ってしまいます。

通信路の入力側につながれた情報源の1秒当たりのエントロピーを $H(X)$、送信信号の不確定度を表すエントロピーを $H_Y(X)$ とした場合、情報伝達速度 $R$ は以下で表されます。

$$R=H(X)-H_Y(X)  -①$$

この $H_Y(X)$ は情報の「あいまい度」と呼ばれています。

各エントロピーの計算

相互情報量

情報伝送速度は、送信信号と受信信号との相互情報量になっています。相互情報量 $I$ とは、2つの事象($X,Y$)の相関度の強さをエントロピーで表したものです。

$$R=I(X,Y)$$$$=H(X)-H_Y(X)$$$$=H(Y)-H_X(Y)$$

送信信号のエントロピー

送信信号のエントロピー $H(X)$ は、入力信号を($x_1,x_2,\cdots,x_n$)とし、情報源から信号が前後に関係なく $p(x_i)$ の確率で1秒間に1つずつ出るとした場合、以下で表されます。

$$H(X)=-\sum_{i=1}^np(x_i)\log_2{p(x_i)}  -②$$

受信信号のエントロピー

受信信号のエントロピー $H(Y)$ は、出力信号を($y_1,y_2,\cdots,y_n$)とし、情報源から信号が前後に関係なく $p(y_i)$ の確率で1秒間に1つずつ出るとした場合、以下で表されます。

$$H(Y)=-\sum_{j=1}^mp(y_i)\log_2{p(y_i)}  -③$$

あいまい度

あいまい度 $H_Y(X)$ は以下で計算されます。

$$H_Y(X)=-\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^mp(y_j)p(x_i|y_j)\log_2{p(x_i|y_j)}  -④$$

$p(y_j)$ は、$p(x_i)$ と、$x_i$ のときに $y_j$ が得られる確率 $p(y_j|x_i)$ によって以下のように表されます。

$$p(y_j)=\sum_{i=1}^np(x_i)p(y_j|x_i)$$

計算例

入力信号 $x_i$ の取りうる値を $x_0=0$ と $x_1=1$ の2つとして、その発生確率は等しい、つまり $p(x_0)=p(x_1)=0.5$ とすると、送信信号のエントロピーは②より、

$$H(X)=-0.5\times\log_2{0.5}-0.5\times\log_2{0.5}=1$$

一方、出力信号 $y_j$ についても同様に、$y_0=0$ と $y_1=1$ の2つとして、$p(y_0)=p(y_1)=0.5$ とすると、

誤差率10%の場合

90%の確率で正しく送信される通信路の場合、送信信号と受信信号の発生率は以下になるため、

送信信号 $x=0$ $x=1$
受信信号 $y=0$ $y=1$ $y=0$ $y=1$
発生率 90% 10% 10% 90%

このとき、

$$p(x_0|y_0)=p(x_1|y_1)=0.9$$$$p(x_0|y_1)=p(x_1|y_0)=0.1$$

であるため、あいまい度のエントロピーは④より、

$$H_Y(X)=-0.5\times0.9\times\log_2{0.9}-0.5\times0.1\times\log_2{0.1}$$$$-0.5\times0.9\times\log_2{0.1}-0.5\times0.9\times\log_2{0.9}\cong0.469$$

情報伝送速度は以下になります。

$$R=H(X)-H_Y(X)=1-0.469=0.53$$

これより、10%の誤差率で情報伝送速度が53%まで落ちることが分かります。

誤差率0%の場合

100%の確率で正しく送信される通信路の場合、

$$p(x_0|y_0)=p(x_1|y_1)=1$$$$p(x_0|y_1)=p(x_1|y_0)=0$$

であるため、あいまい度のエントロピーは④より、

$$H_Y(X)=-0.5\times1\times\log_2{1}-0.5\times0\times\log_2{0}$$$$-0.5\times0\times\log_2{0}-0.5\times1\times\log_2{1}=0$$

情報伝送速度は以下になります。

$$R=H(X)-H_Y(X)=1-0=1$$

誤差率が0%であれば、情報伝送速度が100%であり、当たり前な結果が得られています。

誤差率50%の場合

50%の確率で正しく送信される通信路の場合、

$$p(x_0|y_0)=p(x_1|y_1)=0.5$$$$p(x_0|y_1)=p(x_1|y_0)=0.5$$

であるため、あいまい度のエントロピーは④より、

$$H_Y(X)=-0.5\times0.5\times\log_2{0.5}-0.5\times0.5\times\log_2{0.5}$$$$-0.5\times0.5\times\log_2{0.5}-0.5\times0.5\times\log_2{0.5}=1.0$$

情報伝送速度は以下になります。

$$R=H(X)-H_Y(X)=1-1=0$$

これより、50%の誤差率で情報伝送速度が0%になってしまうことが分かります。

 

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