二項価格評価モデル
二項価格評価モデルとは、オプションの権利行使期間を細分化して、株価の変化を上昇と下落に場合分けして将来の株価の推移を予測し、現在のオプションの価値を推定する方法です。
時点 $t$ の価格 $S_t$ を、価格の上昇確率を $p$、上昇ファクタを $u$、下降ファクタを $d$ とすると、時点1の価格の期待値は、以下で表されます。
$$E[S_1]=puS_0+(1-p)dS_0$$
一般に、時点 $n$ で $k$ 回価格が上昇した場合の価格は、
$$u^kd^{n-k}S_0$$
であり、その実現確率は二項分布から、
$$\frac{n!}{k!(n-k)!}p^k(1-p)^{n-k}$$
となるため、時刻 $n$ での価格の期待値は以下で表されます。
$$E[S_n]=\sum_{k=0}^n\frac{n!}{k!(n-k)!}p^k(1-p)^{n-k}u^kd^{n-k}S_0$$$$=[pu+(1-p)d]^nS_0$$
最後は、次の二項定理を使っています。
$$(x+y)^n=\sum_{k=0}^n\frac{n!}{k!(n-k)!}x^ky^{n-k}$$
コールオプションのプレミアム
コールオプションのプレミアムとは、コールオプションの初期(購入時)の価格です。この価格を、株式と債券で複製した場合で計算します。
コールオプションは、権利行使価格 $K$ に対して価格が上昇すればその差額が利益となり、価格が下落すれば0になります。満期の価格を $C_1$ とすると以下のように表すことができます。ここで $dS\lt K\lt uS$ とします。
- 価格が上昇:$C_1=\mathrm{max}\{uS-K,0\}=uS-K$
- 価格が下落:$C_1=\mathrm{max}\{dS-K,0\}=0$
プレミアムの計算
コールオプションを株式と債券で複製します。株式の価格を $S$、数量を $n$、債券の価格を $B$、利率を $r$ とすると、現在の価格は以下で表され、
$$C_0=nS+B -①$$
満期の価格は以下で表されます。
- 価格が上昇:$C_1=nuS+(1+r)B\to uS-K -②$
- 価格が下落:$C_1=ndS+(1+r)B\to 0 -③$
②と③より $n$ と $B$ を求め、①に代入すると、現在の価格(プレミアム)$C_0$ は以下で求められます。
$$C_0=\frac{1+r-d}{u-d}\frac{uS-K}{1+r}$$