ブラウン運動とは

/物性論

ブラウン運動

ブラウン運動とは、液体中や気体中の微粒子(コロイド粒子など)が、不規則に運動する現象です。この現象は、19世紀に水中の花粉から出た粒子を顕微鏡で観測していた植物学者ブラウンにより発見されました。

ブラウン運動は理論的には、1905年にアインシュタインによって、微小な媒質粒子の衝突によって生じたとする分子運動論的に説明がされ、後にペランの実験により証明されました。

それまで物質が微小な構成粒子(原子・分子)から構成されるとする仮説はありましたが、ブラウン運動によって初めてその存在が実証されたことになりました。

以下、流体中の微粒子のランダムな運動が拡散方程式(熱伝導方程式)に従い、その2乗平均からアインシュタインの関係式が導かれることを示します。

拡散方程式

ある粒子が微小時刻 $t\to t+\tau$ で、位置 $x\to x+\delta$ になった場合、$t+\tau$ 時刻での確率分布 $f(x,t+\tau)$ は以下で表されると仮定します。

$$f(x,t+\tau)=\int_{-\infty}^\infty f(x+\delta,t)\phi(\delta)d\delta  -①$$

ここで、$\delta$ はランダムな変位、$\phi(\delta)$ はその確率を表すとすると、以下の関係が成り立ちます。

$$\phi(\delta)=\phi(-\delta)  -②$$$$\int_{-\infty}^\infty\phi(\delta)d\delta=1  -③$$

このとき、確率分布 $f(x,t)$ は次の拡散方程式に従います。尚、$D$ は拡散係数と呼ばれます。

$$\frac{\partial f}{\partial t}=D\frac{\partial^2f}{\partial x^2}  -④$$

拡散方程式の解は以下になります。

$$f(x,t)=\frac{n}{\sqrt{4\pi Dt}}\exp{\Big(-\frac{x^2}{4Dt}\Big)}  -⑤$$

④を導く

①の左辺を微小量で展開すると、

$$f(x,t+\tau)=f(x,t)+\tau\frac{\partial f}{\partial t}  -(1)$$

①の右辺をで展開し、2次の項まで展開すると、

$$f(x+\delta,t)=f(x,t)+\delta\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\delta^2}{2}\frac{\partial^2f}{\partial x^2}+\cdots  -(2)$$

(1) と (2) を①に代入すると、

$$f(x,t)+\tau\frac{\partial f}{\partial t}=\int_{-\infty}^\infty\Big(f(x,t)+\delta\frac{\partial f}{\partial x}+\frac{\delta^2}{2}\frac{\partial^2f}{\partial x^2}+\cdots\Big)\phi(\delta)d\delta$$

右辺の第1項は、③より、左辺の第1項と消去されます。また、右辺の第2項は、②より、

$$\int_{-\infty}^\infty\delta\phi(\delta)d\delta=0$$

0となるため、右辺は第3項が残ります。

$$\tau\frac{\partial f}{\partial t}=\int_{-\infty}^\infty\frac{\delta^2}{2}\frac{\partial^2f}{\partial x^2}\phi(\delta)d\delta$$

ここで、拡散係数 $D$ を以下で定義すると、

$$D\equiv\int_{-\infty}^\infty\frac{\delta^2}{2\tau}\phi(\delta)d\delta$$

④が得られます。

⑤を導く

⑤を④の左辺に代入すると、

$$\frac{\partial f}{\partial t}=\frac{\partial}{\partial t}\Big(\frac{n}{\sqrt{4\pi Dt}}e^{-x^2/4Dt}\Big)$$$$=\frac{n}{\sqrt{4\pi D}}e^{-x^2/4Dt}\Big(-\frac{1}{2t^{3/2}}+\frac{x^2}{4Dt^{5/2}}\Big)  -(3)$$

⑤を④の右辺に代入すると、

$$D\frac{\partial^2f}{\partial x^2}=D\frac{\partial^2}{\partial x^2}\Big(\frac{n}{\sqrt{4\pi Dt}}e^{-x^2/4Dt}\Big)$$$$=D\frac{\partial}{\partial x}\Big(\frac{n}{\sqrt{4\pi Dt}}\frac{-x}{2Dt}e^{-x^2/4Dt}\Big)$$$$=\frac{n}{\sqrt{4\pi D}}e^{-x^2/4Dt}\Big(-\frac{1}{2t^{3/2}}+\frac{x^2}{4Dt^{5/2}}\Big)  -(4)$$

以上より、(3) と (4) が一致することが分かります。

アインシュタインの関係式

アインシュタインの関係式とは、変位 $\lambda$(変位の2乗の平均)と拡散係数の関係を表します。確率分布が⑤で表される場合、アインシュタインの関係式は以下で求められます。

$$\lambda=\sqrt{\braket{x^2}}=\sqrt{2Dt}  -⑥$$

⑥を導く

変位 $x$ の2乗平均を計算すると以下になります。

$$\braket{x^2}=\int_{-\infty}^\infty x^2f(x,t)dx$$$$=\frac{n}{\sqrt{4\pi Dt}}\int_{-\infty}^\infty x^2e^{-x^2/4Dt}dx$$

ここで積分公式、

$$\int_{-\infty}^\infty x^2e^{-ax^2}dx=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{a^3}}$$

で $a=1/4Dt$ とすると、以下のように⑥が得られます。

$$\braket{x^2}=2Dt$$

 

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