ヘルムホルツ方程式とは

/応用・物理数学

ヘルムホルツ方程式

ヘルムホルツ方程式はラプラシアン $\Delta$ と定数に $\lambda$ より以下のように表すことができます。

$$\Delta u+\lambda u=0  -①$$$$u=u(x,y,z)$$$$\Delta\equiv\nabla^2=\frac{\partial^2}{\partial x^2}+\frac{\partial^2}{\partial y^2}+\frac{\partial^2}{\partial z^2}$$

一方、ラプラス方程式は、ヘルムホルツ方程式で $\lambda=0$ と置くことで得られます。一般に、ラプラス方程式を満たす関数 $u$ は調和関数と呼ばれます。

$$\Delta u=0  -②$$

以下、これらの方程式を円柱座標と極座標で解く場合を考えます。

円柱座標での解法

円柱座標($r,\phi,z$)での座標変換は以下になるため、

$$x=r\cos{\phi}$$$$y=r\sin{\phi}$$$$z=z$$

ヘルムホルツ方程式は以下で表されます。

$$\frac{\partial^2u}{\partial r^2}+\frac{1}{r}\frac{\partial u}{\partial r}+\frac{1}{r^2}\frac{\partial^2u}{\partial\phi^2}+\frac{\partial^2u}{\partial z^2}+\lambda u=0  -③$$

ここで $u\equiv R(r)\Phi(\phi)Z(z)$ のように変数分離すると、③は定数 $\alpha$ 、$\beta$ により以下の3つに方程式に分けられます。(導出

$$\frac{d^2R}{dr^2}+\frac{1}{r}\frac{dR}{dr}+\Big(\lambda+\alpha+\frac{\beta}{r^2}\Big)R=0  -④$$$$\frac{d^2\Phi}{d\phi^2}-\beta\Phi=0  -⑤$$$$\frac{d^2Z}{dz^2}-\alpha Z=0  -⑥$$

⑤については、周期関数 $\Phi(\phi+2\pi)=\Phi(\phi)$ であることを仮定し、$\beta=-n^2$ と置くと、

$$\Phi=\cos{n\phi}$$

④については、$r\sqrt{\alpha+\lambda}=x$ と置くと、以下のように書き替えられます。これはベッセルの微分方程式と呼ばれています。

$$\frac{d^2R}{dx^2}+\frac{1}{x}\frac{dR}{dx}+\Big(1-\frac{n^2}{x^2}\Big)R=0  -⑦$$

これより、ヘルムホルツ方程式を円柱座標で解く問題は、ベッセルの微分方程式を解く問題に帰着します。

極座標での解法

極座標($r,\theta,\phi$)での座標変換は以下になるため、

$$x=r\sin{\theta}\cos{\phi}$$$$y=r\sin{\theta}\sin{\phi}$$$$z=r\cos{\theta}$$

ヘルムホルツ方程式は以下で表されます。

$$\frac{\partial^2u}{\partial r^2}+\frac{2}{r}\frac{\partial u}{\partial r}+\frac{1}{r^2}\left(\frac{1}{\sin{\theta}}\frac{\partial}{\partial \theta}\Big(\sin{\theta}\frac{\partial u}{\partial \theta}\Big)+\frac{1}{\sin^2{\theta}}\frac{\partial^2u}{\partial \phi^2}\right)+\lambda u=0 -⑧$$

ここで $u\equiv R(r)Y(\theta,\phi)$ のように変数分離すると、⑧は定数 $\alpha$ により以下の2つに方程式に分けられます。(導出

$$\frac{d^2R}{dr^2}+\frac{2}{r}\frac{dR}{dr}+\Big(\lambda-\frac{\alpha}{r^2}\Big)R=0  -⑨$$$$\frac{1}{\sin{\theta}}\frac{d}{d\theta}\Big(\sin{\theta}\frac{dY}{d\theta}\Big)+\frac{1}{\sin^2{\theta}}\frac{d^2Y}{d\phi^2}+\alpha Y=0  -⑩$$

⑨の解は一般にベッセル関数で表すことができますが、ラプラス方程式の場合($\lambda=0$)の特解は以下になります。(導出

$$\alpha=n(n+1)  -⑪$$$$R(r)=Ar^n+\frac{B}{r^{n+1}}  -⑫$$

⑩については、$z$ 軸に対して対称 $Y(\theta,\phi)=Y(\theta)$ であることを仮定し、$\cos{\theta}=x$ と置くと以下になります。これはルジャンドルの微分方程式と呼ばれています。

$$\frac{d}{dx}\Big((1-x^2)\frac{dY}{dx}\Big)+n(n+1)Y=0  -⑬$$

これより、ラプラス方程式を円柱座標で解く問題は、一定の前提条件の下、ルジャンドルの微分方程式とベッセルの微分方程式を解く問題に帰着します。

導出

④⑤⑥を導く

③に $u=R(r)\Phi(\phi)Z(z)$ を代入して整理すると、

$$\frac{1}{R}\Big(\frac{d^2R}{dr^2}+\frac{1}{r}\frac{dR}{dr}\Big)+\frac{1}{r^2\Phi}\frac{d^2\Phi}{d\phi^2}+\frac{1}{Z}\frac{d^2Z}{dz^2}+\lambda=0$$

第1項と第2項は $r$ と $\phi$ だけの関数で、第3項は $z$ だけの関数となるため、第3項を定数 $\alpha$ と置き、それ以外を $-\alpha$ と置くと、

$$\frac{1}{Z}\frac{d^2Z}{dz^2}=\alpha  \to⑥$$$$\frac{r^2}{R}\Big(\frac{d^2R}{dr^2}+\frac{1}{r}\frac{dR}{dr}\Big)+\frac{1}{\Phi}\frac{d^2\Phi}{d\phi^2}+(\alpha+\lambda)r^2=0$$

これの第2項は $\phi$ だけの関数であり、それ以外は $r$ だけの関数であるから、第2項を定数 $\beta$ と置き、それ以外を $-\beta$ と置くと以下が得られます。

$$\frac{1}{\Phi}\frac{d^2\Phi}{d\phi^2}=\beta  \to⑤$$$$\frac{r^2}{R}\Big(\frac{d^2R}{dr^2}+\frac{1}{r}\frac{dR}{dr}\Big)+(\alpha+\lambda)r^2=-\beta  \to④$$

⑨⑩を導く

⑧に $u\equiv R(r)Y(\theta,\phi)$ を代入すると、

$$\frac{r^2}{R}\Big(\frac{\partial^2u}{\partial r^2}+\frac{2}{r}\frac{\partial u}{\partial r}\Big)+\frac{1}{Y\sin{\theta}}\frac{\partial}{\partial \theta}\Big(\sin{\theta}\frac{\partial u}{\partial \theta}\Big)+\frac{1}{Y\sin^2{\theta}}\frac{\partial^2u}{\partial \phi^2}+\lambda r^2=0$$

これの第1項と第4項はだけの関数であり、それ以外はだけの関数であるから、第1項と第4項を定数 $\alpha$ と置き、それ以外を $-\alpha$ と置くと

$$\frac{r^2}{R}\Big(\frac{\partial^2u}{\partial r^2}+\frac{2}{r}\frac{\partial u}{\partial r}\Big)+\lambda r^2=\alpha  \to⑨$$

$$\frac{1}{Y\sin{\theta}}\frac{\partial}{\partial \theta}\Big(\sin{\theta}\frac{\partial u}{\partial \theta}\Big)+\frac{1}{Y\sin^2{\theta}}\frac{\partial^2u}{\partial \phi^2}=-\alpha  \to⑩$$

⑪⑫を導く

⑨について $\lambda=0$ と置くと、

$$\frac{d^2R}{dr^2}+\frac{2}{r}\frac{dR}{dr}-\frac{\alpha}{r^2}R=0$$

この特解として $R=r^t$ を仮定し、代入すると、

$$(t^2+t-\alpha)r^{t-2}=0$$

これが常に成り立つためには括弧の中が0になる必要があります。

$$t^2+t-\alpha=0$$$$t=\frac{-1\pm\sqrt{1+4\alpha}}{2}$$

ここで、2つの解の1つを

$$n\equiv\frac{-1-\sqrt{1+4\alpha}}{2}$$

と置くと、もう一つの解は以下になります。

$$\frac{-1+\sqrt{1+4\alpha}}{2}=-n-1$$

従って、$\alpha=n(n+1)$ と書くことができ、特解は定数 $A$ 、$B$ を使って以下のように表すことができます。

$$R=Ar^n+\frac{B}{r^{n+1}}$$

 

数学
解析学、代数学、幾何学、統計学、論理・基礎論、情報・暗号、機械学習、金融・ゲーム理論、高校数学
散策路TOP
数学、応用数学、古典物理、量子力学、物性論、電子工学、IT、力学、電磁気学、熱・統計力学、連続体力学、解析学、代数学、幾何学、統計学、論理・基礎論、プラズマ物理、量子コンピュータ、情報・暗号、機械学習、金融・ゲーム理論

 

タイトルとURLをコピーしました