概要
業務委託とは、雇用によらず、仕事の成果物・役務の提供を受けることができる方法です。民法上「請負」と「委任/準委任」契約に分類され、それらを総称して業務委託契約と呼ばれています。
会社員や派遣社員との違い
会社員(雇用契約)の場合は、雇い主と従業員が主従の関係となるため指揮命令権が発生し、勤務時間など就労に関する制約が生じます。業務委託では指揮命令は行われないため、働き方に制約はありません。
派遣社員(派遣契約)の場合は、派遣会社(派遣元)と雇用契約を結び、業務に関する指揮命令は派遣先企業が行います。業務委託では雇用契約は結ばないため、指揮命令権は生じません。
項目 | 業務委託 | 会社員 | 派遣社員 |
契約形態 | 業務委託契約 | 雇用契約 | 派遣契約 |
雇用主 | なし | 就業先 | 派遣会社 |
提供物 | 成果物 | 労働力 | 労働力 |
指揮命令 | 不可 | 可 | 可(派遣先) |
勤務時間 | 制約なし | 制約あり | 制約あり |
賃金 | 報酬 | 給与 | 給与 |
業務委託の種類
業務委託には、請負契約、委任契約、準委任契約の3つの種類があります。
請負契約
請負契約とは、成果物の完成と引き換えに、依頼主である企業から報酬が支払われる契約形態です(民法第632条)。例えば、デザイナー、プログラマ、警備員、清掃員などがこれに当たります。
請負契約は委任/準委任契約と異なり、請負人が仕事を完成しなかったり、目的物に瑕疵があり契約目的の達成が困難だったりする場合、注文者側に契約を解除できる権利があります。
委任契約
成果物ではなく業務の履行自体に対して報酬が支払われる契約のうち、法律行為を行うものが委任とされています(民法第643条)。例えば、弁護士や税理士、医師などがこれに当たります。
準委任契約
成果物ではなく業務の履行自体に対して報酬が支払われる契約のうち、法律行為を行うもの以外が準委任とされています。例えば、コンサルタントやシステム保守、事務などがこれに当たります。
メリットとデメリット
委託する側のメリットとデメリットは以下になります。
メリット | デメリット |
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受託する側のメリットとデメリットは以下になります。
メリット | デメリット |
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業務委託契約書
業務委託を行う場合は、事前に契約内容を書面にして取り交わしておくことが望まれます。同じ当事者間で複数の委託契約が見込まれる場合、業務委託契約の「基本契約」と個別の業務について定めた「個別契約」に分けると管理しやすくなります。
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業務委託の注意点
業務委託契約が下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用対象となる場合、注文者(親事業者)が守る禁止事項があります。
下請法の適用基準
- 物品の製造・修理委託などの場合
親事業者 下請事業者 資本金3億円超 資本金3億円以下(個人含む) 資本金3億円以下1千万円超 資本金1千万円以下(個人含む) - 情報成果物作成・役務提供委託を行う場合
親事業者 下請事業者 資本金5千万円超 資本金5千万円以下(個人含む) 資本金5千万円以下1千万円超 資本金1千万円以下(個人含む)
禁止事項
下請法第四条に親事業者の遵守事項が定められています。
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