シュレディンガー方程式とは、電子などのミクロな状態の振る舞いを表す方程式です。このミクロな状態は、波動関数によって表すことができます。以下、シュレディンガー方程式を形式的に導きます。
時間に依存しないシュレディンガー方程式
時間に依存しない1次元のシュレディンガー方程式は以下で表されます。
$$-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\phi}{\partial x^2}(x)+V(x)\phi(x)=E\phi(x) -①$$
尚、3次元の場合は、以下で表されます。
$$-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\phi({\bf r})+V({\bf r})\phi=E\phi({\bf r})$$
①を導く
古典力学では、$x$ 方向に速度 $v$ で移動する波(波動関数)は、一般的に以下の形で表され、
$$\psi(x,t)=\psi(kx-\omega t)=\phi(x)e^{-i\omega t} -②$$$$v=\frac{\omega}{k}$$
このとき、波動方程式は以下の形を持ちます。
$$\frac{\partial^2\psi}{\partial t^2}-v^2\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}=0$$
②を代入すると、時間に依存しない波動方程式が得られます。
$$\phi+\frac{1}{k^2}\frac{\partial^2\phi}{\partial x^2}=0$$
これに、ド・ブロイの関係式 $p=\hbar k$ と、古典力学でのエネルギーの式
$$E=\frac{p^2}{2m}+V(x)$$
を代入すると①が得られます。
時間に依存するシュレディンガー方程式
時間に依存するシュレディンガー方程式は以下で表されます。
$$i\hbar\frac{\partial\psi}{\partial t}(x,t)=H\psi(x,t) -③$$
③を導く
光量子のエネルギーの関係式 $E=\hbar\omega$ を②に代入します。
$$\psi(x,t)=\phi(x)e^{-iEt/\hbar}$$
この両辺を時間で微分すると、時間を含むシュレディンガー方程式が得られます。
$$i\hbar\frac{\partial\psi}{\partial t}=E\psi$$
尚、右辺のエネルギー $E$ は、ハミルトニアン $H$ に置換えると③が有られます。
古典力学からの形式的移行方法
量子力学では、物理量は演算子として置換えることができます。そのため、古典物理のハミルトニアンから、座標($r$)、運動量($p$)、角運動量($l$)などについて、以下の変換を行うことで、シュレディンガー方程式を導くことができます。
物理量 | 演算子 | |
座標 | ${\bf r}$ | ${\bf r}$ |
運動量 | ${\bf p}$ | $-i\hbar\nabla$ |
角運動量 | ${\bf l}={\bf r}\times{\bf p}$ | ${\bf l}=-i\hbar{\bf r}\times\nabla$ |
ハミルトニアン | $H$ | $$i\hbar\frac{\partial}{\partial t}$$ |
電磁場内のシュレディンガー方程式
ベクトルポテンシャルを ${\bf A}$ 、スカラーポテンシャルを $\Phi$ とすると、電磁場内のシュレディンガー方程式のハミルトニアンは以下で表されます。
$$H=\frac{1}{2m}(-i\hbar\nabla-q{\bf A})^2+q\Phi -④$$
④を導く
${\bf A}$ と $\Phi$ を使うと、電場 ${\bf E}$ と磁場 ${\bf B}$ は以下で表されます。
$${\bf E}=-\nabla\Phi-\frac{\partial{\bf A}}{\partial t}$$$${\bf B}=\nabla\times{\bf A}$$
このとき、電磁場から荷電粒子が受けるローレンツ力は以下であるため、
$${\bf F}=q({\bf E}+{\bf v}\times{\bf B})$$
運動方程式の $x$ 軸成分は以下になります。
$$m\ddot{x}=F_x=-q\frac{\partial\Phi}{\partial x}-q\frac{\partial A_x}{\partial t}$$$$+q\dot{y}\Big(\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\Big)-q\dot{z}\Big(\frac{\partial A_x}{\partial z}-\frac{\partial A_z}{\partial x}\Big) -(2)$$
次のラグランジュ方程式により、
$$\frac{d}{dt}\Big(\frac{\partial L}{\partial\dot{x}}\Big)-\frac{\partial L}{\partial x}=0$$
(2)の運動方程式が得られるためには、ラグラジアンは以下の形を持ち、
$$L=\frac{m}{2}(\dot{x}^2+\dot{y}^2+\dot{z}^2)-q\Phi+q(\dot{x}A_x+\dot{y}A_y+\dot{z}A_z)$$
$x$(${\bf r}$)と共役になる運動量 $p_x$(${\bf p}$)は以下になります。
$$p_x=\frac{\partial L}{\partial\dot{x}}=m\dot{x}+qA_x$$$${\bf p}=m\dot{\bf r}+q{\bf A} -(3)$$
従って、ルジャンドル変換によりハミルトニアンを求め、(3)を代入すると、
$$H=p_x\dot{x}+p_y\dot{y}+p_z\dot{z}-L$$$$=\frac{m}{2}(\dot{x}^2+\dot{y}^2+\dot{z}^2)+q\Phi$$$$=\frac{1}{2m}({\bf p}-q{\bf A})^2+q\Phi$$
ここで ${\bf p}\to -i\hbar\nabla$ とすると④が得られます。