ペアノの公理
ペアノの公理とは、自然数(natural number)の全体を定義する公理です。ペアノの公理は、集合 $N$ 、定数 $0$ 、関数 $s$ について、以下の5つの公理から構成されます。関数 $s(a)$ は $a$ の「後者」(successor)を表します。
- $0\in N$
- $\forall a\in N$、$s(a)\in N$
- $\forall a\in N$、$s(a)\ne 0$
- $\forall a\forall b\in N$、$a\ne b\to s(a)\ne s(b)$
- $\forall M\subseteq N$、$\forall a\in N$、
$(0\in M)\wedge(a\in M\to s(a)\in M)\to M=N$
このとき、集合 $N$ の要素を自然数といいます。自然数とは、個数または順番を表す一群の数となります。
尚、論理記号について、「$a\in N$」は「$a$ は $N$ の要素」、「$M\subseteq N$」は「$M$ は $N$ の部分集合」、「$\forall a$」は「任意の $a$」、「$\exists a$」は「特定の $a$」、「$A\wedge B$」は「$A$ かつ $B$」、「$A\vee B$」は「$A$ または $B$」、「$A\to B$」は「$A$ ならば $B$」の意味になります。
また、「後者」と自然数の要素との対応は以下のように定義します。
$$s(0)=1$$$$s(1)=s(s(0))=2$$$$s(2)=s(s(1))=s(s(s(0)))=3$$$$\cdots$$
これと後に述べる加法の公式1の $s(a)=a+1$ を使うと、先のペアノの公理は以下のように書き替えられます。
- 集合 $N$ は0を要素に持つ
- 集合 $N$ の任意の要素 $a$ について、$a+1$ も集合 $N$ の要素である
- 集合 $N$ の任意の要素 $a$ について、$a+1\ne 0$ である
- 集合 $N$ の任意の異なる要素 $a\ne b$ について、$a+1\ne b+1$ である
- 集合 $N$ の任意の部分集合 $M$ について、それが0を含み、かつ、
$M$ の任意の要素 $a$ に対し $a+1$ も $M$ の要素であれば、$M=N$ である
ペアノの公理5は、自然数の集合は唯一であることを示しています。
自然数論
加法の定義と公式
加法の定義は以下になります。
- $a+0=a$
- $a+s(b)=s(a+b)$
加法の公式は以下になります。
- $s(a)=a+1$
- $a+b=b+a$ ※交換則
- $(a+b)+c=a+(b+c)$ ※結合則
- $a+b=a\to b=0$
- $a+b=0\to a=b=0$
加法の公式1は、加法の定義2で $b=0$ と置き、加法の定義1と後者の定義により得ることができます。
乗法の定義と公式
乗法の定義は以下はなります。
- $a\cdot0=0$
- $a\cdot s(b)=a\cdot b+a$
⇒ $a\cdot(b+1)=a\cdot b+a$
乗法の公式は以下になります。
- $a\cdot1=a$
- $(a+b)\cdot c=a\cdot c+b\cdot c$ ※分配則
- $a\cdot b=b\cdot a$ ※交換則
- $(a\cdot b)\cdot c=a\cdot(b\cdot c)$ ※結合則
大小関係
大小関係の定義は以下になります。
- $a\le b\rightleftarrows\exists c a+c=b$
- $a\lt b\rightleftarrows(a\le b)\wedge(a\ne b)$
大小関係の公式は以下になります。
- $a\le a$
- $(a\le b\wedge b\le a)\to a=b$
- $(a\le b\wedge b\le c)\to a\le c$
- $(a\lt b\wedge b\le c)\to a\lt c$
$(a\le b\wedge b\lt c)\to a\lt c$ - $a\le b\rightleftarrows(a\lt b\vee a=b)$
- $0\le a$
- $a\lt b\to a+1\le b$
- $M\ne\phi\to\forall a\exists b (a\in M\to b\le a)\wedge b\in M$
- $a\le b\vee b\le a$
- $a\le a+b$
- $(a+c\lt b+c)\rightleftarrows a\lt b$
$(a+c=b+c)\rightleftarrows a=b$ - $c\ne0\to(a\cdot c=b\cdot c\to a=b)$
$c\ne0\to(a\cdot c\lt b\cdot c\to a\lt b)$
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