反変ベクトルとは
反変ベクトルは、座標系のスケール変換に対して、逆のスケール変換が行われます。 例えば、位置やその時間微分(速度、加速度)のように長さの次元を持ちます。
ベクトルが座標変換に依存しないためには、反変ベクトルの成分は座標系の変化を補うよう反対に変換されます。例えば、距離「10m」を「cm」で表すと(座標のスケールを1/100にすると)、「1000cm」(値は100倍)になります。
代表的な反変ベクトルである距離 $dx^j$ の場合、座標変換は以下のように表されます。
$$dx^{i’}=\sum_j\frac{\partial x^{i’}}{\partial x^j}dx^j$$
一般に、これと同じ座標変換に従うベクトルを反変ベクトルと呼び、上付き添え字($a^j$)で表します。
$$a^{i’}=\sum_j\frac{\partial x^{i’}}{\partial x^j}a^j$$
反変ベクトル(${\bf a}$)は、基底ベクトル(${\bf e}_i$)により以下で表されます。この基底ベクトルは、「1m」や「1cm」など座標系のスケールを表す単位ベクトルであるため、共変基底ベクトル(${\bf e}_i$)と呼ばれます。
$${\bf a}=\sum_ia^i{\bf e}_i$$
共変ベクトルとは
共変ベクトルは座標系のスケール変換に対して、同じスケール変換が行われます。 例えば、勾配(距離の微分)のように長さの逆の次元を持ちます。
ベクトルが座標変換に依存しないためには、共変ベクトルの成分は座標系の変化と共に変換されます。例えば、10%の勾配は「10m進むと1m上る」ことを意味しますが、「cm」で表しても、「10cm進むと1cm上る」(値は1/100)となります。
代表的な共変ベクトルである勾配(距離の微分) $\partial/\partial x_j$ の場合、座標変換は以下のように表されます。
$$\frac{\partial}{\partial x^{i’}}=\sum_j\frac{\partial x^j}{\partial x^{i’}}\frac{\partial}{\partial x^j}$$
一般に、これと同じ座標変換に従うベクトルを共変ベクトルと呼び、下付き添え字($b_j$)で表します。
$$b_{i’}=\sum_j\frac{\partial x^j}{\partial x^{i’}}b_j$$
共変ベクトル(${\bf b}$)は、以下で定義される反変基底ベクトル(${\bf e}^i$)
$${\bf e}^i\cdot{\bf e}_j=\delta^i_j$$
により以下で表されます。
$${\bf b}=\sum_ib_i{\bf e}^i$$
スカラー積と計量
反変ベクトルと共変ベクトルのスカラー積は、座標変換に対して不変な量となります。
$$\sum_ia^{i’}b_{i’}=\sum_{i,j,k}\frac{\partial x^{i’}}{\partial x^j}\frac{\partial x^k}{\partial x^{i’}}a^jb_k=\sum_{j,k}\frac{\partial x^k}{\partial x^j}a^jb_k=\sum_ja^jb_j$$
スカラー積を基底ベクトルを使って表すと以下になります。
$${\bf a}\cdot{\bf b}=\sum_{i,j}a^ib_j({\bf e}_i\cdot{\bf e}^j)=\sum_{i,j}a^ib_j\delta_i^j=\sum_ia^ib_i$$
計量($g$)を基底ベクトルにより定義すると、
$$g_{ij}={\bf e}_i\cdot{\bf e}_j , g^{ij}={\bf e}^i\cdot{\bf e}^j$$
反変ベクトル同士のスカラー積は、
$${\bf a}\cdot{\bf a}=\sum_{i,j}a^ia^j({\bf e}_i\cdot{\bf e}_j)=\sum_{i,j}a^ia^jg_{ij}$$
共変ベクトル同士のスカラー積は、
$${\bf b}\cdot{\bf b}=\sum_{i,j}b_ib_j({\bf e}^i\cdot{\bf e}^j)=\sum_{i,j}b_ib_jg^{ij}$$
のように、計量を使うことで表すことができます。