デバイ長
デバイ長とは、プラズマ中の荷電粒子により、電場の遮蔽(デバイ遮蔽)が起こる長さのスケールです。デバイ長(デバイ半径)の外側では、電気ポテンシャルは急に弱まり、ほとんど電場が存在しない状態になります。
デバイ長 $\lambda_D$ により、プラズマ中の電気的ポテンシャル $\phi$ は以下で表されます。
$$\phi(x)=\phi_0e^{-x/\lambda_D} -①$$
$$\lambda_D=\sqrt{\frac{\epsilon_0k_BT_e}{ne^2}}$$
デバイ長は以下の特徴を持ちます。
- プラズマ密度が高くなるとデバイ長は短くなる。
- 電子の熱運動が大きくなるとデバイ長は長くなる。
デバイ長の導出
ポアソン方程式より、
$$\nabla^2\phi=-\frac{\rho}{\epsilon_0}$$
イオン $n_i$ と電子 $n_e$ が存在する1次元の場合を考えると、
$$\frac{d^2\phi}{dx^2}=-\frac{n_i-n_e}{\epsilon_0} -(1)$$
イオンは電子に比べ十分に質量が大きいので、イオンの密度は一定とし、
$$n_i=n -(2)$$
電子の分布はマクスウェル分布に従うとすると、
$$n_e(v)=Ae^{-E/k_BT}=A\exp{\Big[-\frac{1}{k_BT_e}\Big(\frac{m}{2}v^2-e\phi\Big)\Big]}$$
十分な遠方($\phi\to0$)で $f(v)\to n$ を仮定すると、
$$A\exp{\Big(-\frac{mv^2}{2k_BT_e}\Big)}=n$$
より、電子の分布は以下で表されます。
$$n_e=n\exp{\Big(\frac{e\phi}{k_BT_e}\Big)} -(3)$$
(2)と(3)を(1)を代入し、$e\phi\ll k_BT_e$ の仮定でテイラー展開すると、
$$\frac{d^2\phi}{dx^2}=\frac{en}{\epsilon_0}\Big[\exp{\Big(\frac{e\phi}{k_BT_e}\Big)}-1\Big]$$$$\simeq\frac{en}{\epsilon_0}\Big[\frac{e\phi}{k_BT_e}+\frac{1}{2}\Big(\frac{e\phi}{k_BT_e}\Big)^2+\cdots\Big]\simeq\frac{e^2n}{\epsilon_0k_BT_e}\phi$$
これを積分すると①が得られます。
プラズマの条件
プラズマは電離した気体とされていますが、それに加えて以下の特徴を持ちます。
- デバイ長が系の標準的な長さ $L$ に比べ十分に小さい。
デバイ長の外側の大部分のプラズマについては、電気的ポテンシャルや電場はほとんど存在せず、準中性の状態が保たれています。
$$\lambda_D\ll L$$ - デバイ半径内の荷電粒子数が十分に多い。
逆に荷電粒子数が少ないと、デバイ遮蔽は統計的に意味のある概念ではなくなります。
$$\frac{4}{3}n\pi\lambda_D^3\gg1$$ - 中性原子の衝突頻度 $1/\tau$ がプラズマの標準的な周波数 $\omega$ に比べ十分に小さい。
中性粒子との衝突頻度が大きいと、通常の流体力学によって運動が支配されます。
$$\omega\gg 1/\tau$$