中心力とは
中心力(central force)とは、大きさは原点と物体の距離にのみ依存し、方向は原点と物体を結ぶ線に沿っている力です。中心力の例として、万有引力やクーロン力があります。中心力を式で表すと以下になります。
$${\bf F}({\bf r})=F(r)\frac{{\bf r}}{r}$$
中心力の特徴は以下になります。
- 保存場である
- エネルギーが保存する
- 運動量が保存する
保存場である
保存場とは、ポテンシャル($V$)の負の勾配で表すことのできるベクトル場のことで、中心力が保存場となります。
$${\bf F}({\bf r})=-\nabla V({\bf r})$$
エネルギーが保存する
保存場の場合、質点のエネルギー $E$ は、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和で表されます。
$$E=\frac{1}{2}m\dot{\bf r}^2+V({\bf r})$$
このエネルギーの両辺を時間微分すると、次の括弧の中は0になるため、エネルギーが一定に保たれることが分かります。
$$\dot{E}=\dot{\bf r}\cdot(m\ddot{\bf r}+\nabla V({\bf r}))=0$$
角運動量が保存する
中心力により運動を行う場合、角運動量(${\bf l}={\bf r}\times{\bf p}$)は一定(保存量)となります。これは以下のように、角運動量の時間微分が0になることから分かります。尚、左辺の第2項は中心力の定義により0になります。
$$\dot{\bf l}=\dot{\bf r}\times(m\dot{\bf r})+{\bf r}\times(m\ddot{\bf r})=0$$
このように、中心力下では角運動量が保存されるため、質点は平面上の軌道を描きます。
中心力の運動方程式
ニュートンの運動方程式は、力を ${\bf F}=(F_x,F_y,F_z)$、加速度を ${\bf A}=(A_x,A_y,A_z)$ とすると以下になります。
$$F_x=mA_x , F_y=mA_y , F_x=mA_x$$
中心力による運動では、質点は平面上を運動するため、極座標 $(r,\theta,z)$ により書き直すことができます。中心力の定義より、$r$ 成分のみ、$F_r\ne 0$ となります。
$$F_r=mA_r=m(\ddot{r}-r\dot{\theta}^2) -①$$$$F_\theta=mA_\theta=\frac{m}{r}\frac{d}{dt}(r^2\dot{\theta})=0 -②$$$$F_z=0$$
②より、以下の角運動量($l=mrV_\theta$)は一定値(保存量)となります。
$$r^2\dot{\theta}=rV_\theta=\frac{l}{m}$$
つまり、中心力の場合、$r$ 成分のみの運動方程式(①)を解けばよいことになります。
運動方程式を導く
直交座標($x,y$)と極座標($r,\theta$)の関係は以下で表されます。
$$x=r\cos{\theta}$$$$y=r\sin{\theta}$$
両辺の時間微分すると、速度($V_x$、$V_y$ )が得られます。
$$V_x=\dot{x}=\dot{r}\cos{\theta}-r\dot{\theta}\sin{\theta}$$$$V_y=\dot{y}=\dot{r}\sin{\theta}+r\dot{\theta}\cos{\theta}$$
再度両辺の時間微分すると、加速度($A_x$、$A_y$ )が得られます。
$$A_x=\ddot{x}=(\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)\cos{\theta}-(2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta})\sin{\theta}$$$$A_y=\ddot{y}=(\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)\sin{\theta}+(2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta})\cos{\theta}$$
極座標表示の速度($V_r$、$V_\theta$ )は、($V_x$、$V_y$ )との関係から以下で表されます。
$$V_r=V_x\cos{\theta}+V_y\sin{\theta}=\dot{r}$$$$V_\theta=-V_x\sin{\theta}+V_y\cos{\theta}=r\dot{\theta}$$
同様に、極座標表示の加速度($A_r$、$A_\theta$ )は、($A_x$、$A_y$ )との関係から以下で表されます。
$$A_r=A_x\cos{\theta}+A_y\sin{\theta}=\ddot{r}-r\dot{\theta}^2$$$$A_\theta=-A_x\sin{\theta}+A_y\cos{\theta}=\frac{1}{r}\frac{d}{dt}(r^2\dot{\theta})$$
これらにより、中心力の運動方程式である①と②が求められます。