量子力学における変分原理
量子力学における変分原理は、次のように言い表されます。つまり、規格化条件
$$\int\phi^*\phi dq=1$$
を満たし、積分
$$I\equiv\int\phi^*H\phi dq$$
に停留点を取らせる関数 $\phi$ は、シュレディンガー方程式
$$H\phi=\epsilon\phi -①$$
の固有関数であり、その停留値 $\epsilon$ は固有値となります。そして、積分を最小にする関数は基底状態の固有関数で、その固有値が基底状態のエネルギー準位です。
完全直交系での表現
関数が規格化された完全直交系{$u_1,u_2,\cdots$}で展開される場合、
$$\phi=c_1u_1+c_2u_2+\cdots$$
規格化条件と積分 $I$ は以下のように表されます。
$$\sum c_i^*c_i-1=0 -②$$$$I(c_i^*,c_j)=\sum_{i,j}c_i^*H_{ij}c_j -③$$
シュレディンガー方程式を導く
規格化条件②の下で、積分③が停留値をもつ条件を、ラグランジュ乗数法により求めます。ラグランジュ関数を以下のように定義すると、
$$L\equiv\sum_{i,j}c_i^*H_{ij}c_j-\epsilon\Big(\sum_ic_i^*c_i-1\Big)$$
停留点となる条件は次のように表すことができます。
$$\frac{\partial L}{\partial c_i^*}=\sum_jH_{ij}c_j-\epsilon c_i=\sum_j(H_{ij}-\epsilon\delta_{ij})c_j=0$$$$\frac{\partial L}{\partial c_j}=\sum_ic_i^*H_{ij}-\epsilon c_j^*=\sum_ic_i^*(H_{ij}-\epsilon\delta_{ij})=0$$
1つ目の式について行列で書き直すと以下になります。尚、2つ目の式は、1つ目の式の転置共役です。
$$\left(\begin{array}{ccc} H_{11} & H_{12} & \cdots \\
H_{21} & H_{22} & \cdots \\ \cdots & \cdots & \cdots \end{array}\right)
\left(\begin{array}{ccc} c_1 \\ c_2 \\ \vdots \end{array}\right)=\epsilon\left(\begin{array}{ccc} c_1 \\ c_2 \\ \vdots \end{array}\right)$$
この式は、行列表示されたシュレディンガー方程式①を表しています。
$$H\phi=\epsilon\phi \to①$$
変分法への適用
量子力学における変分法とは、多粒子系のシュレディンガー方程式を解く場合に使う近似法の1つです。多粒子系のシュレディンガー方程式は、正確に解くことが困難であるため、以下のような変分法を使った近似法が用いられています。
- パラメタ $\alpha$ を持つ波動関数 $\chi(q,\alpha)$ の形を仮定する。
- $\alpha$ を変化させて以下の関数 $I$ が極小になるものを探す。
分母は規格化条件を表しますが、常に規格化が保たれている場合は不要になります。
$$I\equiv\frac{\braket{\chi|H|\chi}}{\braket{\chi|\chi}}$$ - 関数 $I$ が停留点を持つ $\alpha$ を求める。
$$\frac{\partial I}{\partial\alpha}=0$$