相続とは、人の死亡によって、その者(被相続人)の財産を、法律または被相続人の意思(遺言)に基づいて、特定の者に承継させることです。以下は、民法をベースとして相続の概要を解説します。
親族
親族の範囲は、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族です。
血族と姻族
血族 | 自然血族 | 親子や祖父母、兄弟姉妹など |
法定血族 | 養子縁組により生じる血族 | |
姻族 | 本人からみた配偶者の血族。但し、配偶者の一方の血族と他方の血族の間には姻族関係はない。 |
親等
血族の親等の数え方は、本人を中心に、父母と子が1親等、兄弟姉妹・祖父母・孫が2親等となります。また、姻族の親等は、配偶者を中心に、配偶者の父母が1親等、兄弟姉妹等が2親等となります。
婚姻と内縁
婚姻は、戸籍法の定めにより、個人届を出すことにより効力を生じます。尚、婚姻届がなされても、婚姻成立に必要な実質的要件を満たさない場合は、受理されません。
内縁とは、婚姻意思をもって共同生活を営み、社会通念上夫婦と認められているにも関わらず、婚姻届を出していないため、法律上の夫婦とは認められていません。そのため、内縁関係者には相続権は認められていません。
実子と養子
実子 | 嫡出子 | 婚姻関係にある男女間に解任・出生した子。 |
非嫡出子 | 内縁など婚姻関係のない男女の間に生まれた子。非嫡出子と親との間の法的親子関係は、認知によって初めて生じる。 | |
養子 | 普通養子 | 養子縁組によって嫡出子としての身分を得る。 |
特別養子 | 様々な事情で育てられない子供を、他の家庭で養育できるようにした制度。特別養子縁組によって、実の両親との親子関係は消滅する。 |
相続の開始
相続は、人の死亡(自然死亡)によって開始します。死亡診断書等を添付した死亡届により、戸籍簿に死亡の事実とその日時が記載されます。尚、同時死亡の場合は、本来なら被相続人と相続人の関係にある者同士であっても相続は発生しません。
人が行方不明でその生死が判明しない場合、失踪宣告によって死亡したものとみなされて、相続が開始されます。
相続人
法定相続人
法定相続人とは、被相続人の財産を引き継ぐことができる一定範囲内の人で、欠格・排除・放棄等があった場合を除きます。法定相続人となるのは、被相続人の配偶者と子(代襲相続人を含む)、直系尊属、兄弟姉妹(代襲相続人を含む)に限られます。
配偶者 | 常に相続人となり、第1順位から第3順位の相続人がある場合は、それらの者と同順位で相続します。 | |
第1順位 | 子 | 複数の場合は、同順位で均等で分割し、兄弟姉妹で差はありません。養子、代襲相続(再代襲・再々代襲含む)、胎児(死産を除く)も相続権が認められます。 |
第2順位 | 直系尊属 | 第1順位の相続人がいない場合は、被相続人の父母が相続人になります。父母がいない場合は、祖父母が相続人となります。 |
第3順位 | 兄弟姉妹 | 第1順位、第2順位の相続人がいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹がいない場合は、兄弟姉妹の子の代襲相続(再代襲は不可)が認められます。 |
相続財産の承継
相続できる財産
相続できる財産は、被相続人の財産に属した一切の権利義務で、財産上の法律関係や法的地位なども承継対象となります。
積極財産 | 土地建物、現預金、有価証券、不動産、請求権や債券などの権利 |
消極財産 | 借金やローン、(連帯)保証債務などの債務 |
相続できない財産
相続できない財産は、被相続人の一身に専属したもので、例えば、年金受給権や扶養を受ける権利などです。
相続分
指定相続分
指定相続分とは、被相続人の遺言により指定された相続分です。指定相続分は、法定相続分に優先して適用されますが、最低限の相続分として遺留分の規定が存在します。
法定相続分
法定相続分とは、民法が定める相続分で、遺言による指定がない場合の相続分になります。以下の表の数字は法定相続分、「×」は不在を表します。
子 | 配偶者 | 親 | 兄弟姉妹 |
1/2 | 1/2 | 0 | 0 |
1 | × | 0 | 0 |
× | 2/3 | 1/3 | 0 |
× | 3/4 | × | 1/4 |
× | 1 | × | × |
× | × | 1 | 0 |
× | × | × | 1 |
承認と放棄
相続人は、原則として被相続人の財産を引き継ぎますが、相続の開始を知った時から3ヵ月以内であれば、単純承認・限定承認・相続放棄から選択することができます。
単純承認
単純承認とは、被相続人の財産の全てを無条件で相続することです。相続財産について包括的になされ、例えば、部分的に相続する(または相続しない)ことはできません。
限定承認
限定承認とは、相続人が受け継いだ資産(積極財産)の範囲内で負債(消極財産)を支払い、積極財産を超える消極財産については責任を持たないという相続の方法です。これは、消極財産が積極財産より多い場合に有効とされます。
相続放棄
相続放棄とは、相続財産の承継を拒否することです。相続人は、相続があったことを知ったときから3ヵ月以内であれば相続放棄を行えます。相続放棄は、消極財産が多い場合、積極財産を承継したくない場合、分割協議に参加したくない場合に利用されます。
遺贈
遺贈とは、被相続人が生前に自分の財産を死後、他人に無償を指定しておくことで、死亡後に財産が移動します。但し、被相続人が死亡した時に、受遺者が生存していることが条件となります。
包括遺贈 | 遺言者の遺産の全部または一部を割合をもって受遺者に遺贈すること |
特定遺贈 | 遺言者の特定の遺産を対象にして受遺者に遺贈すること |
死因贈与
死因贈与とは、人の死亡によって効力が発生する贈与契約で、贈与者の意思と受贈者の意思の双方が合致することで成立します。そのため、死因贈与の法的契約は契約であり、単独行為の遺贈とは異なります。