マンション管理適正評価制度
マンション管理適正評価制度とは、マンションの管理状態や管理組合の運営の状態を6段階で評価し、インターネットを通じて情報を公開する仕組みです。マンション管理適正評価制度は、一般社団法人マンション管理業協会によって2022年に創設されました。
評価制度のメリット
マンション管理適正評価制度を利用したマンションには以下のメリットがあります。
- 区分所有者や管理組合の意識が高く保たれ、管理水準の維持向上につながる。
- 適切に管理されているマンションとして、市場における評価が高まる。
- マンション管理の状態が可視化され、購入希望者が管理状況を把握し易くなる。
マンション管理計画認定制度との違い
マンション管理計画認定制度とは、管理組合が作成した管理計画を地方公共団体に提出し、一定の基準を満たす場合に、適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けることができる制度です。2022年4月に運用が開始されました。
マンション管理適正評価制度とマンション管理計画認定制度は、どちらもマンション管理の適正化を図るという目的は同じですが、以下のような違いがあります。
制度 | マンション管理適正評価制度 | マンション管理計画認定制度 |
運営 | マンション管理業協会 | 地方公共団体 |
対象 | 全国のマンション | 管理適正化推進計画を作成している地域にあるマンション |
評価基準 | 5カテゴリ30項目を評価 項目ごとのポイントで0~5に分類 |
5カテゴリ16項目を評価 +地方公共団体独自の規準 |
審査項目 | ①管理体制、②建築・設備、③管理組合収支、④耐震診断関係、⑤生活関連 | ①管理組合の運営、②管理規約、③管理組合の経理、④長期修繕計画、⑤その他 |
判定 | 6段階評価 | 認定(〇×) |
有効期間 | 1年間 | 5年間 |
等級評価項目開示一覧表
マンション管理適正評価制度では、5カテゴリ30項目について点数化し、合計ポイントにより6段階(★0~★5)で統合評価を行います。
管理体制(6項目、計20ポイント)
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
1-1 管理者等の設置 | 管理者および監事が選任されているか。 | 1~▲5 |
集会(以下、総会)の議事録で、管理者(理事長など)と監事が選任されていることを確認します。議事録は、署名(または電子署名)がされている必要があります。
管理者は区分所有者のほか、管理会社なども想定されます。監事は、標準管理規約で設置することが記載されており、管理組合の業務の執行および財産の状況を監査し、その結果を総会に報告する役割を持ちます。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
1-2 総会の開催 | 年1回以上開催されているか。 | 4~▲5 |
総会が年1回以上開催されていること、また、災害などにより1年以上開催することができない場合は、その状況が解消された後、遅滞なく総会が招集される必要があります。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
1-3 総会議事録 | 直近5年分の総会議事録が保管されているか。 | 4~▲5 |
登録申請日の直近5年に開催された総会の議事録があることが必要です。総会の議事録は、議長および議長が指名する2名の総会に出席した組合員の署名(または電子署名)をもって有効となります。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
1-4 管理規約の有無 | 規約原本又は現に有効な規約があるか。 | 3~0 |
管理規約は、標準管理規約に準拠していることまでは必要とされていません。管理規約の改正については、新旧形式の記載のみならず、規約の全体像を管理組合内で周知し、理解を進めることが重要です。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
1-5 管理規約への規定の有無 | 管理計画認定基準項目に掲げられている内容が管理規約に規定されているか。 | 4~0 |
マンション標準管理規約に定められている以下の項目について、管理規約に規定されている必要があります。
-
- 災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部分の立ち入り
- 修繕等の履歴情報の管理等
- 管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
1-6 規約改正状況 | 標準管理規約に準拠した主要項目が規定されているか。 | 4~0 |
マンション標準管理規約に定められている以下の項目について、管理規約に規定されている必要があります。
-
- 暴力団等の排除
- 専有部分の設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理
- 災害時の管理組合の意思決定および敷地共用部分の管理
- 開口部等の改良工事についての区分所有者の責任と負担
- 修繕積立金についておよび修繕積立金の区分経理
- 役員の欠格条件および利益相反取引の禁止
- 監事の権限の明確化
- 管理費等の滞納に対する措置
2.建築・設備(11項目、20ポイント)
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
2-1 【建築基準法】 ㋐ 特定建築物定期調査 ㋑ 建築設備定期検査 ㋒ 昇降機(エレベータ)定期検査【水道法】 ㋓ 専用水道定期水質検査 ㋔ 簡易専用水道管理状況検査 ㋕ 貯水槽の清掃(水道法施行規則の基づく) 【浄化槽法】 ㋖ 浄化槽の保守点検、清掃、定期検査 【消防法】 ㋗ 消防用設備等点検【電気事業法】 ㋘ 自家用電気工作物定期点検 |
実施状況及び報告書の保管があるか。 | 0~▲5 |
各点検・検査の実施状況が確認できる書類(報告書等)が保管されていることが必要です。尚、対象マンションの法定点検等項目に該当するか否かは、関係法令にて確認します。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
2-2 長期修繕計画の有無 | 長期修繕計画が作成されているか。 | 10~▲5 |
長期修繕計画の内容およびこれに基づき算定された修繕積立金額について、総会にて登録申請日以前7年以内に決議されていることを確認します。また、長期修繕計画は以下の内容を満たす必要があります。
-
- 計画期間が30年以上
- 残存期間内の大規模修繕工事の回数が2回以上
- 修繕工事の内容が大規模修繕工事に該当
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
2-3 直近5年間の共用部分の修繕等の履歴情報 | 直近5年間の共用部分の修繕等の竣工図書の保管があるか。 | 10~▲5 |
直近5期分の工事仕様書、工事報告書、工事記録写真、見積書等工事内容が分かる竣工図書が保管されていること、修繕積立金会計からの当該工事に関する支払い履歴があることを確認します。
3.管理組合収支(8項目、40ポイント)
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
3-1 管理費と修繕積立金の区分経理 | 管理費会計と修繕積立金会計の区分経理がされているか。 | 2~▲5 |
管理費会計と修繕積立金会計が区別されていることを、総会で決議された管理組合の貸借対照表と収支計算書で確認します。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
3-2 管理費会計収支 | 修繕積立金会計から他の会計(管理費会計等)への充当がされていないか。 | 5~▲5 |
貸借対照表と収支計算書において、修繕積立金会計における支出の費目が、マンション標準管理規約の第28条に定める経費以外に使われていないことを確認します。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
3-3 修繕積立金会計収支 | 修繕積立金の資金計画の設定。 | 12~0 |
積立方式には均等積立方式と段階増額方式がありますが、いずれも計画期間の推定工事費よりも積立金累計額の方が多いこと、年度収入額が長期修繕計画どおりであることを確認します。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
3-4 管理費滞納額【戸数】 |
直前の事業年度の終了の日時点における、管理費の滞納発生状況。 | 4~▲4 |
管理費滞納額【期間】 | 直前の事業年度の終了の日時点における、管理費の滞納住戸における滞納期間及びその対応状況。 | 4~▲4 |
管理費滞納額【滞納率】 | 直前の事業年度の終了の日時点における、管理費の3ヶ月以上の滞納状況。 | 4~▲4 |
管理費の滞納発生状況について、直前の事業年度での徴収すべき管理費に対する、滞納している管理費の割合が以下であることを確認します。
-
- 滞納住戸数:0~3%以内
- 滞納期間:0~6か月未満
- 滞納率:0~10%以内
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
3-5 修繕積立金滞納額【滞納率】 | 直前の事業年度の終了の日時点における、修繕積立金の3ヶ月以上の滞納状況。 | 4~▲4 |
直前の事業年度において各戸から徴収すべき修繕積立金の総額に対する、修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額の割合が10%以内であることを確認します。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
3-8 修繕積立金の額 | 修繕積立金の額が著しく低額でないか。 | 5~▲5 |
以下のように算定された修繕積立金の平均額が、「マンション修繕積立金ガイドライン」の事例の3分の2が包含される幅の下限値を上回っていることを確認します。
計画期間全体における月当たりの修繕積立金の平均額 $=(A+B+C)/(X\times Y)$ $A$:計画期間当初における修繕積立金の残高 (円) $B$:計画期間全体で集める修繕積立金の総額 (円) $C$:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額 (円) $X$:マンションの総専有床面積 (㎡) $Y$:長期修繕計画の計画期間 (ヶ月) |
4.耐震診断関係(1項目、10ポイント)
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
耐震性(耐震診断の実施) | 耐震診断及び耐震改修の実施状況。 | 10~0 |
新耐震基準(建築確認済証の交付年月日が昭和56年6月以降)の建物であるかを確認します。尚、建築確認済証の交付年月日が昭和56年5月以前の建物については、耐震診断および耐震改修の実施の有無(耐震基準適合証明書)で確認します。
5.生活関連(4項目、10ポント)
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
緊急対応 | 設備等の警報発報による緊急対応の体制。 | 3~0 |
業務シフト制により24時間体制で一次対応要員が常駐している状態であるか、各専有部分の緊急時(非常通報など)に関係機関に連絡するとともに警備員を現場に急行させるホームセキュリティが備わっている場合は3ポイントとなります。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
消防訓練の実施状況 | 法令上の義務に基づく当該事業年度内の消防訓練の実施状況。 | 3~▲5 |
定期的に年1回以上実施しているかを確認します。尚、特定用途防火対象物のマンションは年2回以上の実施が求められます。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
名簿の整備状況 | 区分所有者および居住者名簿を備えているか。 | 1~0 |
組合員名簿(区分所有者名簿)と居住者名簿の双方が整備されていることを確認します。名簿に記載する内容は、氏名、連絡先、固定電話・携帯電話・メールアドレスなどです。また、名簿の内容に変更があれば、1年に1回以上更新を行うことが求められます。
評価項目 | 評価内容 | 配点 |
防災対策 | 災害への対策が講じられているか(全8項目) | 3~0 |
防災対策として以下の対策が講じられているか確認します。
-
- 消防計画の作成及び周知、防火管理者の選任
- 災害時の避難場所の周知
- 災害対応マニュアル等の作成・配付
- ハザードマップ等防災・災害対策に関する情報の収集・周知
- 災害時に必要となる道具・備品等の備蓄
- 高齢者等が入居する住戸を記した防災用名簿が作成されている
- 災害発生時における居住者の安否確認体制の整備
- 災害発生時における被害状況・復旧見通しに関する情報収集・提供体制の整備