熱力学第0法則
熱力学第0法則とは、「物体AとBが熱平衡で、AとCが熱平衡にあれば、BとCは熱平衡である」とするものです。
これは、物体AとBが同じ温度で、AとCが同じ温度であれば、BとCは同じ温度であると言い換えることもできます。この第0法則により、温度の定義が可能となります。
熱平衡とは
熱平衡とは、ある物質の温度が一様で、熱の移動が起こらない状態を言います。
例えば、1リットルの100℃の熱湯が入った容器を、同じ量の0℃の水に浸けてしばらく置くと、両者は(放熱などを考えなければ)約50℃のお湯になります。これは熱平衡に達した状態と言えます。
熱とは
熱とは、高温の物質(水など)から低温の物質へと移動するエネルギーです。上の例では、100℃の熱湯から0℃の水に「熱が移動した」と考えます。
熱の正体は、その物質を構成する分子の運動(振動)エネルギーです。分子の運動エネルギーは、別の分子に衝突することによって相手に伝えることができます。分子が衝突し合って、巨視的に(人間の目で見るレベルで)全ての分子の運動エネルギーが一様になった状態が熱平衡です。
熱の単位は、かつてはカロリー($\mathrm{cal}$)が使われていました。1カロリーとは、1グラムの水の温度を1℃上げるのに必要な熱量です。尚、エネルギーの単位であるジュール($J$)で表すと、1カロリーは4.2ジュールです。
温度とは
温度とは、熱が移動する方向を示します。つまり、自然な(外から力などを加えない)状態であれば常に、熱は温度が高い方から低い方へ移動し、逆は起こりません。
これは、運動エネルギーが大きい分子と運動エネルギーが小さな分子が衝突した場合、運動エネルギーは前者から後者へ移動し、その逆は起こりえないことからも理解できます。
温度の単位は、ケルビン($K$)です。0℃は約273Kで、0Kは絶対零度(約マイナス273℃)として定義されています。
尚、熱と温度の違いは、水に例えると、水の量(リットルなど)と水深と考えることができます。
熱力学とは
熱力学とは、物質の熱の移動などに関する巨視的な性質を扱う物理学の一分野です。巨視的とは、それを構成する分子の数がアボガドロ定数レベル($\sim10^{23}$)になる系です。
ここで言っている”性質”とは、温度、圧力、体積、内部エネルギー、エントロピーなどで、これらが熱力学で扱う物理量となります。
物質を構成する分子は非常に多いため、微視的に見るとのその情報量は膨大になりますが、巨視的に見ればこれらの数個の熱力学的な物理量に集約することができます。微視的な情報から巨視的(熱力学的)な物理量を導く手法は統計力学の分野になります。
熱力学の物理量の間には一定の関係が成り立ちます。例えば空気などの気体の場合、外から熱や気体の出入りがなければ、温度 $T$、圧力 $p$、体積 $V$ の間には一定の関係が成立ちます。これは状態方程式と呼ばれています。
$$T=T(p,V)$$